第434話 死の謎

【麻藤深夜 視点】


「エリの傷はどんな感じだったんだ?」


玲奈がいうからには貴志がエリを襲っていないと確信があるんだろう。


「背中から剣などの武器で心臓を迷い無く貫かれていて、油断しているところを背後から刺されたのではないかという理由と、覚醒者たちの証言により貴志さんが裏切者と判断されました」


「なるほどな……貴志の事を知らない人からしたらやりそうな事なんだろうな。貴志のクラスは魔王だしな」


貴志の見た目は悪人顔であり、知らない人からは恐れられていたらしいが、貴志は魔王をロールプレイしていただけで、実際は仲間思いの優しいやつだった。


「ですが、あのエリについていた傷には貴志さんのもつダークマター特有の侵食がありませんでした。仮に貴志さんが本気で攻撃していたらエリの遺体は残って居なかったはずです」


「ダークマターの侵食?」


「はい、一般には知られていませんが、ダークマターの武器には開放段階があり、貴志さんの段階は最高ランクで、貴志さんのダークマターで攻撃されると死の侵食という因子が組み込まれ、細胞が連鎖的に死滅していくのです」


「えっ、なにその怖い効果……」


貴志が覚醒者になってからの能力やダークマター武器に関してはほとんど知らなかったけど、死の侵食って……完全に悪役の技だなと思うけど、逆に貴志らしいとも思った。


「じゃあ、生き残って帰ってきた覚醒者の中にユリや貴志をやったやつがいるってこと?」


「生き残っている可能性もありますが、貴志さんと相打ちになっている可能性もあるので、まだ分かりません。エリは抜けている所があるので不意をつかれるかもしれないですが、貴志さんが簡単にやられるとは思いません」


「確に貴志は常に何かに警戒しているくらい慎重だからな」


大企業の息子ともなると、様々な敵から命などを狙われていたりするらしいから、常に警戒しているとは昔に聞いたことがあったな。


「そうだ、貴志の遺体は? 親元にあるのか?」


「貴志さんの遺体は見当たらなかったらしいです。覚醒者達の話では戦闘が行われたであろう場所ではもの凄い戦闘痕があったらしいですが、貴志さんの遺体だけは無かったらしいです」


「じゃあ、貴志は生きてる可能性もあるのか?」


「いえ、覚醒者の生存確認する為のバイオチップが死亡表示になっていたらしいので……遺体が残ら無いほどの激しい戦闘をしたのかもしれません。ですが、そうならば犯人は上位覚醒者で間違いないでしょう」


「上位覚醒者か……」


「はい、貴志さんと対等に戦えるのは、エリか剣聖のガイアス・ランブルくらいで、手を組めば炎魔鬼のアスや糸使いのエンデ・コーナーがいますが、アスとエンデ・コーナーも死亡しているので、可能性で言えばガイアスだけですが……貴志さんを襲う理由は今のところ無いです」


「剣聖なら武器が剣だからエリを刺した可能性もあるのか……」


1番怪しいのはガイアスという剣聖だな……


「剣聖は、聖女であるコーデリア・クラウスと並ぶ聖人と言われる程の人格者なので、剣聖を疑う人はいないでしょう……私は嫌いですが」


あまり表情に変化の無い玲奈が本当に嫌そうな顔をしていた。


「そんなに剣聖が嫌いなのか?」


「はい。剣聖、炎魔鬼、糸使いの3名とも嫌いです」


「何か嫌なことでもされたのか?」


「いえ、何もされてらいませんが……私の勘が嫌いだと言ってるのです」


「玲奈の勘か……」


普通、勘と言われても信憑性の無いものだが、玲奈の勘は凄く当たり、子供の頃は預言者なんじゃないかと言うほど、勘が当たっていた。


だから、玲奈が勘で嫌いだと言うからには、3人には何かあるのかもしれない。


「それで、お兄様に話しておきたい事があります」

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