第433話 真覚醒
【麻藤深夜 視点】
「はぁ…はぁ……」
自分は夜中に街中を走っていた。
こんなに全力疾走しているのはいつぶりだろう?
脚が悲鳴を上げているが、気にせずに目的地へ向かって走った。
★
「!!?」
自分は玲奈に呼び出されたビルに向かって走っていたら、急に身体が鉛の様に重くなり、立っているのすら辛くなったので、自分はこの現象をおこした女性を探す。
「師匠! 今急いているんです! 早くこの拘束を解いてください!」
この鉛の様に重くなる【重力魔導】を自分に向かって気軽に使うのは、自分の師匠であるシンディ師匠しかいなかった。
「深夜くん、ユリの件で玲奈のいる所に向かっているんでしょ?」
「何で師匠はその事を知っているんですか!?」
何で師匠は誰にも話していないのに知っているんだ?
「私は深夜の事なら何でも知ってるよ?」
「こわっ!?」
いつも師匠の考える事は、予測不能だけど……今のは背筋がゾワッとした。
「……それで、何で自分が玲奈のところにむかっているのを知っているんですか?」
「私って【大魔導師】だからね。弟子の事なら分かってるつもりなんだけど……まあ、単純にユリや貴志くんの件は私も少しは調べたからね。深夜の行動パターンは分かるよ」
「確かに……自分ならとりあえず玲奈と連絡を取るか……それで?」
師匠とは幼少期から知っている仲だから、分かるのか……って、自分は師匠の行動パターンなんか、全く解らないぞ?
「その前にさ、深夜は身体の変化に気が付いてる?」
「身体の変化? それって自分のことですよね?」
「うん……そっかぁ、気付いてないのかぁ……深夜は鈍感系?」
師匠は自分のことを、不思議な生き物を見るかの様な目で見ながら、う〜んと悩んでいる。
身体の変化?
特には……あっ!
「そう言えば、今日は何故か調子が良かったです」
「やっぱり変化があるじゃない! ってか、これで何も感じていなかったら、私の方が深夜の鈍感具合に引いてるわよ!」
「でも、ちょっと調子が良かったくらいですよ?」
「いやいや、ちょっとな筈ないわ。深夜は気が付いてないかもしれないけど、今の深夜は覚醒者並に身体能力とかが強化されてるからね」
「えっ!?」
★
自分は師匠と別れたあと、都内にある玲奈の個人所有のビルに入り、玲奈が待っているという部屋に駆け込んだ。
「あっ……お兄様……」
部屋には様々な機械が動く、薄暗い部屋ではあったが、玲奈は中央に寝かされたカプセルの前で立っており、振り向くと泣いているのが分かった。
……玲奈が泣く姿なんて初めて……いや、遥か昔に見た記憶があるが……思い出せない。
「玲奈、詳しい事を教えてくれ!」
「はい……」
玲奈から信じられない連絡をもらい、すぐにでも詳細を知りたかったが、通信傍受の不安があるから直接説明したいと、このビルに呼ばれたのだ。
「まず、ユリは完全には死んではいません」
「えっ!?」
まだ死んでない!?
「そ、それなら!」
「お兄様、このカプセルを見てください」
「カプセル……あっ、ユリ!」
玲奈の前にあった大きなカプセルには小さな丸いガラス窓があり、そこの中を覗くと緑色の液体内に入り、眠っているかのような状態のユリが見えた。
「このカプセルは、覚醒者用のメディカルポットで、ユリは奇跡的に生きてはいますが、目覚める兆しは今のところありません」
玲奈は悲しげであり、悔しそうな表情をしながらユリの現状を説明してくれた。
ユリの肉体はメディカルポットにより完全に修復は可能らしいけど、修復前の損傷は死亡判定されるほど激しかった為、意識が戻る可能性は限り無く低いらしい。
「そして、貴志さんがユリを殺したと報道されていましたが、ユリの傷を見る限り、貴志さんの可能性はほぼ無いと思います」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます