第428話 オリジンゲート攻略 ②
【河本貴志 視点】
オリジンゲート攻略が開始されてから2日目。
アビスゲート内は、様々な厳しい気候に適合したモンスターなどが現れる広大なフィードになっているのがほとんどで、フィード内のどこかにいる数匹いるボスを順番に倒していけば攻略出来るのだが、極まれにある特殊なアビスゲートではフィード内に塔があったり、地下洞窟があったりするが……
このオリジンゲート内は、広大な地下洞窟が何層にもなっている特殊なダンジョンタイプだった。
そして、今は5階層のフロアボスを倒し、出現した次の階層へ向かう途中のモンスターが現れない空間で野営をしていた。
「貴志さん、調子はどうですか?」
「あっ、ユリちゃんか。こうして話すのは久しぶりだな」
俺は一人で休憩していたら、親友の妹であるユリちゃんに声をかけられた。
「そうですね! 貴志さんとはなかなか接点が無かったですからね」
「そうだな。あっ、結婚祝いとか出産祝いをくれてありがとうな」
昔は深夜とかと一緒に遊んだりしていたけど、覚醒者になってからはほとんど話す機会が無かったので、直接話すのは20年振り位だろうか?
「いえいえ、直接いけなくてすいませんでした。貴志さんの子供って、男の子ですよね?」
「ああ、今年でもう15歳なんだよ。このダンジョン攻略が終わったら、深夜と一緒にうちに遊び来いよ。まあ、アメリカだから深夜からしたら、気軽にこれる距離では無いけどな」
「ふふ、そういうのは死亡フラグって言うんじゃないですか?」
「はははっ、兄妹揃って同じことを言うんだな! 魔王の俺が死亡フラグなんて気にしていたらカッコ悪いだろ?」
なんたって俺は魔王だからな。
魔王なら何事も強気でいかないというのが、俺の魔王ライフだ。
「なるほど、お兄ちゃんと話が合うだけありますね」
「まあな、深夜は俺のソウルフレンドだからな!」
「ふふ、私達姉妹はそんな貴志さんに凄く感謝してるんですよ」
「そうなのか? そんな雰囲気は一切感じなかったぞ? むしろ、ぶっちゃけ壁を感じた位だぞ」
子供の頃にはよく遊んでいたけど、ユリちゃんとかと遊んだが、深夜との近距離とは違い、何となく壁がある気がしたんだけどな。
昔から相手との距離感は正確に把握出来ていたはずなんだが……
「それはお兄ちゃんと比較してたからじゃないかな? 普段の私達からしたら、お兄ちゃん以外ではダントツで1番親しい感じでしたよ」
「……それは初耳だな」
ってか、他の人にはそんなに壁を作っていたのか?
その割には姉妹の好印象の話しか聞いたことがないんだけど、何でだ?
ん?
「という事は、当時俺が姉妹のどちらかに告白し……」
「ごめんなさい!」
「返答が異様に早いなっ!!」
ノータイムというよりも、むしろマイナス位な勢いだったな。
「本当にごめんなさい」
「全くの脈なしか……ショックだぜ」
「ふふ、本気じゃない癖に。知ってますよ、貴志さんは昔から静香さん一筋だって事を」
「まあな。俺には静香だけいれば十分過ぎるぜ」
静香は親が決めた許婚ってやつだったけど、俺とは出会った時から運命の相手だと、子供ながらに確信した位だからな。
「ところで、何で俺なんかが姉妹の信頼を得られてるのか不思議なんだが……自分でいうのもアレだが、見た目も怖い部類だし、性格もどちらかというと悪人だしな……なんでだ?」
俺の親も爺もお金の為ならば犯罪以外ならばなんでもやるグズの部類に入るんだが、俺もたまに親の手伝いをしている関係で、悪人寄りな人間だ。
そして見た目がとにかく怖がられる。
ちょっと笑顔で子供に接してみたら、トラウマになるほどの恐怖を感じるらしい。
まあ、息子だけは俺の血を引いているだけあって、一切怖がらなかったがな。
「理由はシンプルにお兄ちゃんの心の支えだからだよ」
「それだけか? 玲奈ちゃんも優先的に俺を支援してくれていたけど、同じ理油なのか?」
実はダークマターを発見したのは玲奈ちゃんなんだが、後から知った話だと、どんなお金持ちや権利者ですら、年間のダークマター購入量の上限は100gだけなんだが、俺の年間購入量は軽く10kgは超えていたんだよな。
それに覚醒者として、悪質な企業からしつこく嫌がらせされていた時も助けてくれたり、兄の友達ってレベルの支援ではない気がするんだが……
「はい、そうですよ。私達姉妹はお兄ちゃんの為ならば、お兄ちゃんをイジメたやつらを消したり、世界征服も厭わないんですが……」
「……?」
うん?
俺の聞き間違えか?
玲奈ちゃんなら過激な発言もするが、一切他人の悪口を言わないとされているユリちゃんが、消すとか世界征服とか言わなかったか?
「お兄ちゃんに知られて嫌われちゃう可能性が少しでもあるってお姉ちゃんが言うから、完全にバレない時だけ……」
ああ、なるほど……ユリちゃんは完全に猫を被ってるのか。
このブラコン姉妹のヤバイ方は、玲奈ちゃんじゃなくてユリちゃんなんだと俺は確信した。
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