第425話 アビスゲート

大地震から5年……


自分は無事に高校と大学をなんとか卒業し、幸運な事に建設会社の大手企業へ就職する事が出来た。


資格などは働きながら取る為、必死に勉強していたのだが……職場で精神的にまいっていた。


「おいハズレ! 頼んでいた仕事はまだかよ!」

「は、はい! もう少しで終わります!」

「ちっ、遅えなぁ。あの超天才シスターズの兄貴だから凄い才能でもあるのかと思えばそうでも無いし、お前って本当にハズレだよな」

「すいません……」


……ハズレ。


今、自分は関西での半年の研修を終え、東京の本社に戻り、新しい所属している部署で仕事を覚え始めているのだけど……


自分はそこで、ハズレと呼ばれていた。


新しい部署に配属され、初めて自分の大手建設会社に就職出来た理由が分かったのだが……


自分は大地震以降、更に有名人になった妹達とのコネを作ったり、妹達の兄が就職した会社という宣伝目的が内定理由だったのだ。


しかし、建設に関する知識もあまり無く、本来なら就職するのは無理だろう大手建設会社に入れたのだから、頑張ろうと研修を受けたのだが、そこで同期とのレベル差に愕然とした。


自分の卒業した大学は、建設とは関係のないところだったのだけど、自分以外の同期は建設に関わる事を学んできた人達であり、しかも将来的には部長以上になる様なエリートばかりを集められていて、スタート地点が自分と同期とでは大きな差があり、専門用語が普通に飛び交う研修の中、専門用語に戸惑いながら研修を受けていた。


そんな訳で、自分は半年の研修では基礎的な知識しか覚えられなかったので、周りの同期と比べでハズレと呼ばれる様になっていた。


それでも研修が終わったあとも頑張って勉強すれば追いつけるだろうと思っていたのだが……今までと同じでハズレという噂があっという間に広がり、自分が同期と似たようなレベルの仕事をしても、ハズレというイメージから、正しく仕事の評価をされなくなっていた。


「上からはしっかり面倒を見ろって言われてるけど、なんで俺がこんなハズレの面倒を見なきゃいけないんだよ! 、おらっ、あと30分で終わらせろ! じゃなきゃ、昼休無しなッ!」

「は、はい!」

「あんまり酷いとゲート近く勤務にするからなっ!」


そう怒鳴りながら先輩は、大量の資料をもって部屋を出て行った。


はぁ……しんどいな……。


それにしても、ゲート近く勤務にするか。



ゲート。


正確には大地震時に、世界で初めて観測されたアビスゲート……オリジンゲートと呼ばれている、突然北海道の中心部に現れた、幅50m近くもある超巨大な門であり、不定期に空間が歪みアビスゲート周辺から謎の異形な生き物、モンスターと呼ばれる生き物が現れ、破壊と殺戮を繰り返していた。


そして、アビスゲートの出現と共に現れたのが、覚醒者と呼ばれる特殊能力者達だ。


覚醒者の事は、各国にて対応が違うけど、日本では一般人である非覚醒者には情報をあまり開示していないが、玲奈の話では謎の粒子に適合した人で、適合しない人には空気と変わらないものだけど、適合者は強制的に肉体を作り変えられてしまった新人類らしい。


覚醒者になる割合は人類の約1%と少数で、アビスゲートから現れるモンスターに効率良く対抗できるのが覚醒者だった。


国もモンスター討伐軍を設立してモンスター駆除をしているらしいが、モンスターに既存の重火器の効果が芳しくないらしいので、国は覚醒者にライセンスを発行して、モンスター討伐依頼をしているみたいだ。


覚醒者も国からの高額な討伐金とモンスターから取れる特殊素材を企業に販売して大金を得られると、人気職種になっていた。


その中でも有名な覚醒者がいて、玲奈とエリ、そして貴志の3人も日本屈指の有名覚醒者だった。


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