第423話 夢想少年 ③
自分は貴志と一緒に教室へ入り、自分の席に向かうといつもの嫌な光景が広がっていた……。
「……」
自分の机にはマジックで様々な悪口が書かれていた。
ふぅ……
自分は小学生のとき、妹達が天才少女と呼ばれ、自分が夢想少年と呼ばれ始めてから、学校では毎日の様に悪口を机に書かれるようになっていた。
夢想少年と呼ばれるのは自業自得だから諦めているが、他にもカンニング魔とか不正野郎とか、ズルとかいろいろ書かれていた。
何故こんな事になったのか、今となっては分からないが、小学校の時に夢想少年と呼ばれ出してから少し経ったとき、週刊誌に妹達に学力が負けるのが嫌でカンニングしているとかスポーツでズルをしているとか嘘を書かれたのだ。
その週刊誌はいろいろな意味で話題になり、全く根拠の無い記事だけど、最終的には悪い印象だけが今でも人々の記憶に残ってしまい、今でも陰湿なイジメを受けていた。
まあ、物理的な暴力や物をイタズラされたりは無かったので、無視すればいつかはイジメも無くなると思っていたのだが……高校3年生になった今でもイジメは続いていた。
普通なら先生に言うなり、イジメをやっている生徒達は分っているから文句を言うのが良いのかもしれないけど……何年もイジメられた事により人間不信になり、妹達や貴志以外の人とはまともに話が出来ない人見知りになっていたので、何か行動したくても行動出来なくなっていた……。
「くそっ、またあいつ等かっ!? 深夜、俺が……」
「いや、有り難いけど、大丈夫だよ。あと一年も無いしさ……」
「深夜が言うならアレだけど……(あいつら、卒業したら絶対に社会的に抹殺してやるからな……」
「ありがとうな、貴志」
自分は貴志がいたから何年もイジメを我慢できた気がする。
「そう言えば、来週からテストかぁ……赤点が1つでもあったら、夏休み中に補習だなんて……今回はなんとしても赤点は回避しないとな」
「貴志は数学だけ苦手なんだよな〜。もし補習になったら、貴志は置いてくからな?」
「……ああ、絶対にみんなで北海道旅行にはいくぞ」
そう、今年の夏休みは自分と貴志が高校生最後の夏休みという事で、自分と貴志、妹達、それに貴志の彼女と一緒に北海道旅行へ行くつもりなのだ。
「あはは、テスト頑張れよ!」
「クソッ……深夜ってあのシスターズに比べたら普通だけど、普通の俺らからしたら勉強はクラストップだし、スポーツも上手くてハイスペックなんだよな」
「まあ、必死に頑張っての結果たからな……それでも妹達の足元にも及ばないから、兄としては情けないよな……」
自分は小さい時から本当に必死に妹達を守れる様に努力したが、一般人を抜ける事は出来なかった。
まあ、中学生のときには既に守る側から見守られる側になっていたんだよな……。
「いや、金持ちの両親が居る俺が言えた事じゃないけど、深夜は両親が亡くなってから本当に良い兄として頑張ってると思うぜ?」
「そっか……」
貴志にそう言われると何だか嬉しいな。
★
2ヶ月後……
「ついに今日は北海道旅行だな」
先週から高校は夏休みに入っており、今日から2週間ほど北海道旅行。
実は北海道に行くのって初めてだから、楽しみなんだよね。
「ふふ、お兄様は楽しそうですね」
「そうだね! これもお姉ちゃんが北海道ツアーをプレゼントしてくれたおかげだね!」
「本当にありがとうな」
そう、この北海道旅行は妹の玲奈からのプレゼントなのだ。
何故、玲奈が2週間もの北海道旅行をプレゼント出来るお金があるかと言うと、玲奈はとある世紀の発見をした権利として、莫大な資産を高校1年生にして持っていたのだ。
だからと言って、妹の資産で生活の全てを解決しようとするのは、兄として嫌なので、玲奈の資産のほとんどは玲奈のため……というか次の研究資金に当てられていた。
「お兄様のその言葉が聞けるのでしたら、月に一度位のペースで旅行をプレゼントするのも良いかもしれませんね……」
玲奈は顔を赤らめながら本気か冗談か分からない事を言い出した……うーむ、どっちか分からないが、何となく本気っぽいから、念の為に釘を刺しておくか……
「玲奈、たまにプレゼントされるからありがたみも倍増するんだぞ?」
「……なるほど。分かりました。覚えておきます」
「うん、それじゃあ、そろそろ出発……ん? 地震か?」
これから出発しようというタイミングで床が揺れ始めた……
ガタガタガタ!!
「くっ、これはデカイぞ!?」
「「キャァ!!」」
自分は妹達を抱きしめながら、すぐさま家から脱出し、近くの広い公園まで避難してきた。
公園には自分達と同じく避難してきた人達がたくさんいた。
そして……
「なにこれ……Aシステム? クラス?」
「頭の中に何かが……」
この地震で世界は大きく変わってしまった。
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