第416話 七獣傑 ②

 ユピテルが襲撃してきた獣族の女性に向けて遠距離攻撃をしようとしていた。


「あら? あなたの攻撃も我々には危険ね……」


 獣族はそう言いながらもゆっくりと近付いくる。


「そう思うなら引いてくれねぇかな?」


 バチッ、バチッ……


 ユピテルの右手は雷属性付与により、どんどんと輝きを増してきているのだが、獣族は相変わらずゆっくりと歩く。


「それは出来ないわ……と言うより、私も今日は理由があってここまで来ているから、それを達成するまで引くことは出来ないわ」


「……レイ、テレーザさん、俺の後ろに下がってくれ……」


「分かった」

「はい」


 自分とテレーザさんがユピテルの後ろに退る。


 他のクラスメイトは既に大半は逃げているので、ユピテルも自分とテレーザの存在だけを気にすれば良いので、スキルを気にせず使えるみたいだった。


「いけっ!! 雷撃砲!」


 ズガガガ……!!


「凄いね……」


「はい、ユピテルくんの攻撃でどれくらいのダメージがあるかで私達の作戦も変わりそうですね……」


 ユピテルの放った雷属性付与の攻撃はレーザー光線の様な超高速で放たれるもので、自分の【魔導砲】に雷属性付与をした上に速度を増したみたいな超攻撃的なものだった。


 ザビル先生が一般生徒では破壊が不可能のレベルと言っていた壁を破壊したのか、現在は砂埃が視界全体に舞っている為に獣族の状態が確認出来ないが、あれで倒せなければ自分やテレーザさんには無理なのではないかと思える程の威力だった。


「はぁ……はぁ……やったか?」


「いや、ユピテル……その言葉は今言ったら絶対にダメなフラグだよ……」


「はあ? なんだよフラグって」


「相手が生きているっていうのを確実にする言葉みたいな?」


「そんな事があってたまるかよ……この電撃砲はチャージ中は無防備になることと、最初に狙いを定めた方向にしか撃てないという弱点さえクリア出来れば回避は出来ない必殺技なんだぜ、発動直前に獣族の女は俺の電撃砲の直線上にいたのは確認出来ているから、回避は出来ないはずだ……」


「確かにアレを回避出来たら……化け物だね」


自分とテレーザさんの攻撃は確実に当たらないだろう……


「あら? 化け物だなんて失礼ね」


「「えっ!?」」


未だに晴れない砂埃の中から獣族の声が聞こえてきて自分達はビックリする。


しかも、声のトーンからして苦しそうじゃないぞ?


あれを回避したのか?


それだとまずいな……


「さすがの私もあんな強烈な攻撃を見たのは久しぶりだったわ」


砂埃が晴れてきたのだが、獣族の女性は本当に無傷だった……


「やべえな……アレを完全に回避したのかよ?」


「あなたの攻撃も予想以上に凄かったわよ。あなたは本当に見た目通りの子供なのかしら?」


「ああ、俺は正真正銘の子供だぜ……神童と呼ばれ続けてきたがな……」


 仕方ない……自分は獣族の女性を【鑑定】する事にした。


 普通なら人に【鑑定】するのはマナー違反になりそうだから、物や魔獣、許可のもらった人にしか使わないが、敵である獣族の女性にはマナーなんて気にしても仕方ないので躊躇わず使うことにした。


【鑑定の極み効果により、敵対者にのみ完全鑑定が可能になります……実行しますか?】


 ん?


 今まで【鑑定】をする時には無かったアナウンスが……いや、今は迷っている場合ではないと思い、【完全鑑定】を実行する。


【完全鑑定の自動機能により、敵対者に鑑定を感知される事を無くすために隠蔽モードを実行しました】


 名前・サテラ(689歳)

 状態・無敵時間稼働中……無敵時間・残り43秒

 属性・木

 職種・闘王

 種族・獣族・白髪猫

 パッシブ・知覚強化、木精霊の加護、闘神の加護

 アクティブ・朱眼【無敵時間】、身体強化、幻影

       認識誤認、速殺手、自然治癒、木精霊魔術

       闘神技

 弱点・雷属性、氷属性、深淵属性、左足の古傷、しっぽ

    無敵時間終了後、30秒間のみ硬直時間有り

 情報・闘神軍・七獣傑最後の1人。

    相手の認識を狂わせ、相手に本来の力を発揮させない戦いが得意。

    左足に古傷がある。

    総合驚異度【23,600】



 ……えっ、今までの【鑑定】と全く違うんだけど?


 凄い詳細まで分かるようになってるぞ……


 スキルはもちろん、弱点や情報なんてものも追加されてる。


 そして一番気になるのが朱眼の【無敵時間】って能力だな。


 ユピテルの【電撃砲】を防がれたのも、この【無敵時間】のせいだろうな。


 逆に言えば、あの【無敵時間】が切れた後の30秒間は硬直時間があると書いてあるから、その30秒を狙えばチャンスになる。


 しかも、弱点に雷属性とあるくらいだから、電撃砲が当たりさえすれば何とかなるのではないだろうか?


「ユピテル、さっきの【電撃砲】だけど、もう一度撃てる?」


「あ? ああ、あと一発位は何とかすれば撃てるけど……撃った後は完全に戦力外になるぜ? それでも良ければ撃てる」


 自分は小声でユピテルに話しかける。


「うん、そしたら50秒後にもう一度撃てるように準備して、あとは僕が合図するから」


「了解、レイを信じるぜ」


「よろしく」


 よし、あとは50秒間くらい無敵な化け物からユピテルを守り切れれば、自分達の勝ちが見えてくる気がした。


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