第415話 七獣傑

 自分は【魔導眼】の覚醒により今までよりも膨大な量の【魔導】を行使できるかもしれないと、ドキドキしながら【魔力武器】に【魔導】を流し続けた。


 この【魔力武器】は、武器庫にあった大量な武器のひとつだったので、ある程度の【魔導】を流したら崩壊してしまうのではないかと心配をしていたが、その心配は無用かの様に20分近く【魔導】を流し続けても崩壊する事はなく、刀状の刃に形成していた。


 今まで扱っていた【魔導】の数百倍はある量を、【魔力武器】に流し込み刀を形成しているが、相変わらず【魔導】は他の人には見えないのか、自分が禍々しい程の【魔導】を圧縮した武器を両手に持っているのに、クラスメイトやザビル先生は全く気にしている雰囲気は無かった。


【魔眼】の仲間である【異能眼】を持つクラスメイトならば、自分の【魔導】を見れるかと思ったけど、どうやら違ったらしい。


 しかし、そろそろ【魔導】の制御が難しくなってきたかもしれないな……


 ドゴッッッ!!


 自分が【魔導】の制御に集中している中、どこからか分からないが、地震が来たかのような瞬間的な衝撃のあと、一瞬だけど部屋の明かりが消えて、数秒もしないうちに復帰していた。


 な、何が起きたんだ?


 自分やクラスメイト達が突然の衝撃にビックリしているなか、校内アナウンスみたいなものが流れてきた。


『現在、学校内に張られていた特殊結界が破られました。生徒は先生の指示に従い、速やかに避難をして下さい』

『繰り返します。現在、学校内に……』


 特殊結界が破られた?


 特殊結界が何かは分からないけど、避難しなくてはいけないレベルの出来事が発生しているのは間違いないみたいだ。


「皆さん、放送のあった通り緊急事態みたいですので避難スペースへ移動します。その後、私は対策の為に職員室に向かい……」


 ザビル先生が途中で話さなくなったけど……どうしたんだ?


 ドサッ……


 えっ、ザビル先生……?


ザビル先生は受け身も取らずに床に倒れてしまった。


「きゃああ!?」

「ザビル先生が!?」

「ザビル先生の後ろに……あれは獣族!?」


 ザビル先生は背後からは長い白髪に猫耳と尻尾の生えた女性が立っており、両手付近は白い毛がフサフサしていたが、右手が真っ赤に染まっていた……


「こっちの方から、強い波動を感じたから来てみたけど、発生源はこいつじゃない?」


 そして、倒れたザビル先生からは大量の血により血の水たまりが出来ていた。


「ヤバいぞ! 俺達だけじゃ獣族と戦うなんて無理だぞ!」

「だけど、身体能力が高い獣族から逃げられるのか!?」


 クラスメイト達はザビル先生がいきなり倒された事によりパニックになっている子がいっぱいいた。


「あっ、君だね? 君の持っている武器から信じられない位の魔の波動を感じるよ。それは魔剣かな? 何となく魔神寄りの魔の波動も感じるかな……君、ちょっと危険だね」


 獣族の女性は自分が魔導を流した【魔力武器】が気になったらしくて、僕に向かって話しかけてきた。


 獣族って自分の知る獣人族よりちょっと獣に近い部分が身体の一部にあるだけで、ほとんど獣人族と変わらないらしい。


 もしかして自分が【魔力武器】に【魔導】を流し込み過ぎて危険な奴を呼び寄せた?


しかし、素直に自分が【魔導】を流しましたって言うと危険な気がしてきた。


「この武器は学校の備品の【魔力武器】ですから、同じ物ならあそこの武器庫にいっぱいありますよ?」


「あははは、そんな危険な武器が学校の備品な訳ないでしょ! 嘘を付くならもっとマシな……っと、話の途中に邪魔しないでくれるかな?」


 ズシャ!


「ぐはっ……」


 自分が獣族の女性と話をしている間に、背後にまわり【魔力武器】で攻撃を仕掛けたクラスメイトの攻撃は簡単に回避されてしまい、そのまま獣族の爪により腹を引き下がれてしまった。


「キャアアア!?」


 ヤバい……今のでクラスメートは更にパニック状態になってしまった。


「……レイくん、どうしますか?」


「あの獣族はやべえぞ」


 テレーザさんとユピテルが近寄ってきた。


「逃げるか戦うかのどちらかだよね? まあ、逃げるにしても誰かが足止めをしないといけないか」


 くっ、【オルタナティブアーマー】があれば、まだ戦えたのかも知れないけど……今はまだ半壊状態だから使い物にならないんだよな。


「戦うか逃げるかの判断は箇々に任せるとして、私とレイくんで足止めをして、ユピテルくんに先生を呼んできてもらうのが良いかも」


「足止めなら俺もやるぞ、戦いは得意な方だからな」


「いや、僕とテレーザさんだと長く一緒に戦っているから連携しやすいし、ユピテルの方が先生のいる場所に詳しいでしょ?」


ぶっちゃけ自分とテレーザさんはまだこの学校に慣れていないから、先生を呼ぶなら時間ロスは出来るだけない方が良いだろう。


「そうだな……なら俺の遠距離攻撃を食らわしたら、速攻で行くぜ!」


「それならあまり戦力にならない私が職員室に行くわ!」


 クラスメイトの女子が職員室へ行ってくれると言ってくれたので頼むことにした。


「そうか! なら頼んだぜ! じゃあ俺は最大出力でやるかな」


 そう言うとユピテルは右手を前に突き出し、数秒集中したら右手に強い光を纏っていた。


 ……あれは自分がなかなか成功しなかった雷属性付与?


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