第405話 ジュピリアス冒険者育成学校 適性検査

 自分達は講堂にて、順番に【適性検査】を受けていた。


「はい、【魔導変異薬】の適性がありますので、あちらの列に並んで下さいね。では次の方……」


 自分は【適性検査】というものは【祝福の儀】みたいな【職種】を与えてくれる儀式みたいなものの名称かと勘違いしていたのだが、実際には【魔導変異薬】という【科学魔導】により生み出された薬を体内に投与しても大丈夫かを調べる検査だった。


【魔導変異薬】はほとんど人に投与出来るらしいが、極稀に体質に合わないという理由で【魔導変異薬】を投与出来ない人がいるらしく、そういう人は【無職】と言われ数百万人に1人位の確率でいるみたいだ。


 まあ、【無職】では冒険者としては絶望的なので、他の学校へ編入したりするらしいが、だからと言って仕事が出来なかったり、差別を受ける事は無いから安心していいぞとザビル先生が言っていた。


【適性職】が無くても商売等や事務作業とか力や特殊な技能が必要な職種以外は出来るだろうから、自分でもザビル先生の言う通りかなと思った。


 しかし、自分とテレーザさんは【イーストエンド】へ帰るために、更なる力が欲しいところなので、【適性検査】はパスしたいなと思っていたが、自分とテレーザさんは既に【祝福の儀】にて職種を授かっているので、もしかしたら【適性検査】にて、適性無しと出てしまうのでは?という不安はあった。


「それでは次の人……」


「あっ、私の番ですね」


 やっと、テレーザさんの番になった。そんな、次は自分の番である。


「頑張ってね」


「はい、ありがとうございます」


 テレーザさんは緊張しながら、【適性検査】のスペースへいき、腕にシールみたいなものは貼られていた。


 あの貼られているシールはパッチテストみたいなものらしく、色が変化しなければ問題なく、赤く変色すると【魔導変異薬】を使うと危険となり、適性がないという感じらしい。


「はい、大丈夫ですね。【魔導変異薬】を投与出来ますよ」


「ありがとうございます」


 おっ、テレーザさんは大丈夫みたいだな。


 自分達は大丈夫なのか不安だったけど、テレーザさんが大丈夫なら自分も大丈夫だろう……多分。


「次の人どうぞ」


「はい、お願いします」


 やっと自分の番になったな。


「えっと、その包帯は怪我かな? 怪我をしている場合には【魔導変異薬】を投与出来ない事になっているんだけど」


「あっ、これは怪我ではなくて……大きな傷みたいなものを隠すための包帯なので大丈夫です」


 最近では自分が慣れてしまったから、忘れがちだったけど……【血龍印】の赤黒い包帯を巻いていたから、さっきからチラチラと見られていたのは新しいクラスメイトを見ていると言うよりは【血龍印】を見ていたのかな?


 そう考えると急に恥ずかしくなってきたな……


「そうなんだね、赤黒い包帯だからちょっと怪我とは違う雰囲気だったから……」


「大丈夫ですかね?」


「ええ、怪我でないのなら大丈夫よ。では【適性検査】を始めますね」


「お願いします」


 自分の腕にシールを貼ってもらい、しばらく待ってみたが反応は無い。


「うん、大丈夫ね。それじゃあ、向こうで【魔導変異薬】を投与してもらって下さいね」


「分かりました、ありがとうございます」


 自分も【適性検査】は大丈夫だったので、テレーザさんの向かったベッドスペースへ向かった。


【魔導変異薬】の投与は、点滴をうつみたいな感じで10分位、投与してもらうと完了するらしい。


 講堂内に設けられたベッドスペースには50床近い数のベッドが設置されていて、1クラスが一気に寝られるだけの数が揃っている。


 まあ、あと5クラスやると考えるとザビル先生が急いでいた理由にも納得な感じがした。


 それから、自分も【魔導変異薬】を投与してもらい、クラスメイト達が全員投与完了したのをザビル先生が確認したので、皆が教室に戻ろうとしたとき、テレーザさんの様子がおかしい事に気が付いた……


「テレーザさん、大丈夫? 何か様子がおかしいけど?」


 顔色は悪くないが息づかいが荒く、ちょっと苦しそうだ。


「はい……なんだか急に呼吸が……」


 そう言いながら、テレーザさんは意識を失い倒れそうになったところを自分は支える。


「テレーザさん!?」


「レイくん! テレーザくんはどうしたのだっ!?」


 ザビル先生もびっくりしながらすぐに駆けつけてくれた。


「はい、急に呼吸が荒くなったと思ったら、意識を失ってしまって……」


「なんだとっ……もしかしたら【魔導変異薬】の拒絶反応かもしれない。至急、精密検査を受けさせる! おい、担架をすぐに持って来てくれ!」


「拒絶反応って……それが出ない為の検査じゃないんですか!?」


「そうなんだが……極まれになんだが、身体の抵抗力が強すぎる子は【魔導変異薬】を異物と……」


【……身体の異物侵入を確認】


「えっ……?」


【……異物の除去を開始……異物除去作業に失敗。身体構造の作り変えが始まります……】



 な、なんだ?


 急に呼吸が……


 もしかして、自分にもテレーザさんと同じように拒絶反応が……?


「今度はレイくんもかっ!? くっ、今までこんな事は無かったのに……、おいっ、担架をもう一つ追加だ!」


 ……自分はテレーザさんと同じように突然意識を失い倒れてしまった。


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