第402話 ジュピリアス 職業案内所 ②

 職業案内所の相談カウンターにいたお姉さんが奥から戻ってきた。


「待たせちゃったわね。上司にいろいろ確認してきたのだけど、結論から言うと学校に通った方が良いかなと思います」


「学校ですか……」


 自分達は学校に通うよりは早く稼ぎたいんだよなぁ。


「君達の事情は聞いたから、早く帰りたいのも分かるけど、まず飛空艇を利用するには身元保証するものが必要なの。そして、別大陸へ行くにはパスポートが必要で、パスポートを取得するには最低でも身元保証してくれる大人が2名と学校卒業証明書、あとは保証金が必要なんです」


「どれも無いですね……特に身元保証してくれる大人は難しいかも」


 こっちには親もいないしなぁ……


「私達が身元保証になってあげたい気持ちはあるけど、職業案内所などの機関にいる人は身元保証人になれない制度だから、無理なのよね」


「なるほど……身元保証人は現状いないし、お金を稼ぐにしても時間はかかる、残るは学校卒業って事ですね」


「そう。学校は12歳までだから、君達の場合はあと2年は通わなくてはいけないの。学校卒業が免除にならないのかって上司に確認したんだけど、極稀に特例として例外はあるけど、基本的には法律に従わないとダメらしいわ」


「ちなみに、その特例って?」


「それは王族だったり、国からの特別任務などの為に学校へ通えない人が特例になるみたいだけど、それでも最低限の学力などの証明は必要ね」


「それは無理そうかな……」


「レイくん、諦めて学校に通いましょう」


「うん、そうだね。学校に通いながらお金を稼ぐかな……そういえば冒険者登録は出来るんですか?」


「ごめんなさいね、冒険者登録も学校卒業証明書が必要なのよ」


「そうなんですか……僕達でお金を稼ぐ方法はありますか?」


「一応は職業案内所だから、仕事の紹介は出来るけど、年齢的に金額が安いから飛空艇の資金を稼ぐのは現実的ではないわね……」


「レイくん、ずいぶんと時間がかかっているけど、大丈夫か?」


 自分達がどうしょうか悩んでいたらダリエスさんが話しかけてきた。


「あっ、ダリエスさん。実はいろいろ問題があって……」


「そうなのか? 良かったら俺も問題というのを聞いて良いか?」


「はい、大丈夫です」


 自分はダリエスさんにも先ほどのやりとりを説明して、学校卒業証明書、身元保証人、保証金が必要な事を伝えた。


「なるほどな……学校卒業証明書は難しいが身元保証人にはなってやっても良いぞ、残りの1人もパーティーメンバー内に聞けば1人位はやっても良いっていうやつはいるだろうから、大丈夫だ」


「本当ですか?」


「ああ、レイくん達は命の恩人だからな、身元保証人位は問題ないぞ。あと保証金等のお金は学校に通いながら、学校の休みの日に俺達の狩りを手伝いをしてくれたら、稼ぎの何割かは払おう」


「えっ、学校卒業証明書が無いと冒険者登録が出来ないんじゃ……?」


「ああ、街の外での狩りは誰でも出来るから大丈夫だ。冒険者登録していないと冒険者ランクが上がらなかったり依頼を受ける事やダンジョンに入る事が出来ないだけだ」


「そうだったんですね。なら学校に通いながら休みの日は狩りの手伝いをしてお金稼ぎをするのかぁ」


 結構大変な気がするけど、大丈夫か?


 今の話の中で、学校卒業までは街から離れられないって事と資金稼ぎに時間がかかりそうなのがネックな気がする。


「早く帰りたいのは分かるがこればっかりは国のルールみたいだから諦めるしか無いんじゃないか?」


「そうですね……そう言えば、学校への入学手続きはどうすれば良いんですか?」


「それはこちらでも出来るので必要な書類に記入してもらえれば大丈夫ですよ」


「分かりました。それじゃあ、入学手続きをお願いします」


 自分とテレーザさんは受付のお姉さんが出してきた何枚もの書類にサインなどをしていくと、学校にもいくつかの科が存在する事が判明する。


「高等普通科、騎士育成科、魔導士育成科、冒険者育成科、魔導研究科、超深淵探求科……?」


 騎士や冒険者の育成科は分かるし、魔導士育成科や魔導研究科は魅力的だけど、超深淵探求科ってなんだ?


 深淵って言ったら、自分の謎属性を連想してしまうけど、もしかしたらこっちでは深淵属性って普通なのかな?


「あっ、そちらの専門科は高等普通科と冒険者育成科は誰でも入れるのですが、他は適性試験があるんですよ」


「やっぱり適性試験ってあるんですね」


「一カ所につき適性試験は一度しか受けられませんが、全ての科の適性試験を受ける事は可能ですがどうしますか?」


「うーん、どうしょうかテレーザさん」


「私はレイくんと同じ学校が良いです! 一緒に通えるのならどの科でも良いですよ」


 自分もそうだけど、テレーザさんもいきなり知らない人達のいる学校にひとりで行くのは嫌なのだろうなと思う。


 しかも、別大陸で今までの常識が通じない気がするし……


 個人的には魔導関連や超深淵探求科は興味があるけど、テレーザさんは魔法が苦手だから、多分適性試験には受からない気がする。


 そうすると、残るは高等普通科、騎士育成科、冒険者育成科なんだけど、騎士育成科は自分に向いていない気がするから……無難に高等普通科か冒険者育成科かな?


 そして、高等普通科について聞いてみたら、経済学や計算、歴史、法律などの勉強をする学科らしくて、歴史などが学べるのは魅力的だと思ったけど、歴史は冒険者育成科でも学べると聞いて、自分達は冒険者育成科に入学する事にした。

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