第400話 ジュピリアスへ ③

 自分は【ジュピリアス】に向かいながらも、テレーザさんとの訓練は毎日欠かさずにやっていた。


 自分やテレーザさんは【ハンタースクール】内では、そこそこ強い部類ではあったけど、所詮は学生レベルで凄いというだけで、ベテラン冒険者並に強くなれなくては、テレーザさんと一緒に【スカウトフォート】までたどり着けないのでは?と思ってしまう。


 あと、毎日テレーザさんと模擬戦をしている理由は、体術系統のスキルなどを取得出来ないかな?と思ったからだ。


 もし【格闘家】みたいな身体を動かすスキルを覚えられれば、これからの旅にもかなり有利になるのではないかなと考えていた。


 ちなみに、【バリエリア】のダリエスさんは身長よりも大きな盾を使い仲間を守る事を得意とする適性職である【大盾使い】、ハマールさんは【弓使い】というよくありそうな適性職で、日中の暇な時にハマールさんから弓の使い方も教わっていた。


 ダリエスさんの【大盾使い】はちょっとカッコいいなと思ったが、ダリエスさんから盾を借りて持ってみた時に、盾が重すぎて持ち上がらなかったので、これは無理そうだなと直感したので諦めてしまった。


 その点、ハマールさんから借りた弓に関してはまあまあ使えるかな?と思った位なので、もしかしたら才能があるか無いかは武器などを持ったら分かるのでは無いかなと予測していた。


 そしてテレーザさんから習う【武闘技】というスキルに関しては弓程ではないが、大盾ほど絶望的ではないという微妙な印象だった。


 こういう才能の有無を【鑑定】にて数値化出来たら楽なのになと思ってしまうが、これからいろいろな人から多くの事を学べば、何が得意か不得意か自然と分かるようになるのかな?と考えていた。


 そう言えば、職種を覚える条件に複数のスキルを習得するってあったけど、【魔物使い】の場合は【ティム】だけで覚えられちゃったんだよな……


 習得するスキル数も何か条件があるのか調べてみたいな。



 それから2日が経過した昼過ぎ、目的地である【ジュピリアス】に問題無く到着する事ができた。


【ジュピリアス】は首都ではないが、街の発展具合は首都に負けないレベルらしくて、金属製品の製造や宝石加工工場などが主な生産品らしい。


【ジュピリアス】も他の街と同じく木は貴重品なので、木造建築は全くなくて建物のほとんどは見た感じではコンクリート造みたいなだった。


 それに建物以外も前世の記憶に近いレベルの文明度になっている気がした。


 これは本当に自分達が住んでいた大陸だけが孤立していて、文明が遅れていたのではないかと思ってしまっていた。


「レイくん、街中の建物が気になるのかい?」


 ダリエスさんは自分が周りをキョロキョロと見ているのが気になったのか、聞いてきた。


「僕達の住んでいた街では木造が大半を占めていましたから、ちょっとどういう風に作っているのか気になったんですよ」


「へー、木を家に使うなんて贅沢な話だな……一度位は他の街並みを見てみるのも楽しそうだな……俺も自由の身ならレイくんとかと一緒に別大陸へ行きたいところだよ」


「いろいろな地域を自由に旅するのは楽しいと思いますよ。知らない場所を冒険するのが僕の目標なんで、いつかは全ての国を廻りたいですね」


 自分とダリエスさんは楽しそうに旅の話をしながら街中を歩いていたら、ダリエスは疲れたようなため息を吐きながら、つぶやきだした。


「ああ、俺も知らない土地を探索する様な冒険をしてみたいな……」


「ダリエスさんは旅をしている余裕なんてないですからね? ダリエスさんが居なくなったら【バリエリア】は解散しちゃうんですから……」


「それは分かっているよ、ハマール。ただな今回のダンジョン攻略で多くの仲間が亡くなったから、ちょっと精神的にな……」


「【バリエリア】は今までほとんど死者は出なかったから、ダリエスさんの気持ちは分かりますけど、尚更頑張って貰わないと……あと20年は頑張って下さいよ?」


「うへ……20年って言ったら50近いじゃねえか……その前には引退させてくれよ……」


 確かに若いうちは冒険者として活動しても楽しいかもしれないけど、ずっとは身体がついていかなそうだなと思ってしまった。

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