第399話 ジュピリアスへ ②

 自分とテレーザさんが【ジュピリアス】へ向い始めてから、2日が経過していた。


 予定では4日程度で到着するらしいので、あと2日ほどでやっと街に入れるのかと思うと楽しみになっていた。


 しかし、それとは別に現状の把握が全く出来ていないので、どうしようかなと悩んでいた。


「レイくんは何を悩んでいるのですか? やっぱり資金稼ぎですか?」


 テレーザさんが自分がこれからどうするか迷っていたので話しかけてきてくれた。


「うん、資金稼ぎの方法も悩まないといけないんだけど、別大陸なんてのがあるなんて考えもしなかったな思ってね……」


「それなんですが……」


「ん? どうしたの?」


 テレーザさんは何かを言おうか迷っている感じの表情をしていた。


「【魂装】なのですが……」


「ああ、そう言えば【魂装】については職業案内所か学校で正しく学んだ方が良いからって、詳しくは教えてくれなかったね」


「実は私の師匠から【魂装】について少し聞いたことがあったのを思い出したんですが……」


「そうなの?」


「はい、【聖教会】が出来る遥か昔、大戦時には【魂装】や【魔装】などの【真魂化】という邪神と戦う手段があったと師匠は懐かしそうに話していました」


 えっ……【魔装】?


 まさか、テレーザさんの口から【魔装】の名前が出てくるとは思っていなかったので、びっくりしてしまう。


 ペンザエモンの話では【魔装】については秘匿されていて、現在では知っている人は……って、テレーザさんの師匠は長生きしているから、それで知っているのか?


「大丈夫ですか、レイくん」


「あ、うん。それで邪神との大戦って数千年前のおとぎ話みたいなやつ?」


 以前に歴史を調べていた時、図書館には何種類もの絵本などがあったのだけど、その中に邪神と戦う英雄や神の使徒の話や【魔王】【聖人】などが邪神と戦った話などいろいろあったのを思い出した。


 まあ、絵本だから真実を壮大に盛った話なのかなとは思うけど。


「そうです。そして師匠は【魂装】を使えたらしいのです」


「なら、テレーザさんも【魂装】を習ったの?」


「いえ、私には教える事が出来ないとも言っていました」


「テレーザさんでも【魂装】は覚えるのが難しいの?」


「そうではなく、覚える以前に【魂装】を使うには身体的に何かしらの条件があって、その条件を満たすには既に失われた技術が必要なのだとか言っていた気がします」


「失われた技術……ってそしたら、何でこの大陸の人は使えるの?」


「それは私も疑問に思っていましたが……師匠はほとんど山に籠もっていますから、全てを知っている訳ではないと思います、ですから別大陸の話は知らなかったのかも知れません」


「確かに山に籠もっていたら、世界の情報は疎くなるかもしれないか……」


 でも、ペンザエモンさんは【魔装】を使えるのは人族以外って言っていたから、もしかしたら人族に向いているのが【魂装】って事なのかな?


 うーん


 何だか知らない情報が立て続けに入って来るから、全く情報が整理出来ないな。


「すいません、私が余計な事を言ったせいでますます混乱してしまいましたか?」


「ああ、別にテレーザさんが悪いわけではないから、気にしないで。むしろ、いろいろ教えてくれて助かっている位だよ」


「そうですか? それなら良かったのですが……」


「まあ、全ては街に着いて、職業案内所などで更に情報収集してから考えるしかないのかな?」


「そうですね」


 これからやることがいっぱいあって大変かもしれないな。

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