覚醒編

第398話 ジュピリアスへ

 自分とテレーザさんは【バリエリア】のダリエスさんとハマールさんと共に馬車で隣街である【ジュピリアス】へ向かっていた。


 自分は【バリエリア】のパーティー全員で【ジュピリアス】へ移動するのかと思ったら、ほとんどのパーティーメンバーは魔狼ダンジョンが再度暴走しないように役人が来るまでの監視にまわるらしい。


 まあ、多大な犠牲を出してせっかくダンジョンボスを倒したのに、再度暴走させられたらたまったものではない。


 これから向かう【ジュピリアス】には街中にダンジョンはなくて、工場生産などを主体に発達した街らしい。


「本当は【ジュラムス】にある職業案内所で冒険者登録が出来るか聞ければ良かったんだけど、【ジュラムス】にあった職業案内所は完全に崩壊していたからな……」


「あの、フェリの登録が必要なのは分かりますが、冒険者登録は必要なんですか? 僕達は多分冒険者活動はしないで他国にいっしまうと思うんですけど……」


 冒険者として活動したい気持ちはあるけれど、それは【スカウトフォート】に帰ってからでも良いかなと思っているので、それならば冒険者登録はしないで自由に移動した方が早い気がした。


 隣街に行ければ地図等があるだろうから、それを頼りに街は無視して最短ルートをすすむのも有りかなと思っていた。


「それは2人が飛ばされる前にいた国という事か?」


「はい。【イーストエンド地方】に帰りたいと思っています」


「俺は近隣の国なども調べたりしているから地理には詳しいか、はっきり言って、【イーストエンド】という地域は聞いたことがないから、多分かなり離れた地域なのではないかと俺は予想している。だから、ある程度の資金を貯めてから移動する計画を立てた方が良いんじゃないか? お金さえあれば飛空艇にも乗れるしな」


「そうなんですか……とりあえず、【ジュピリアス】に着いたら【聖教会】で地図を見せてもらおうと思います」


「【聖教会】? そんな教会はないぞ?」


「えっ……」


【聖教会】を知らない?


【認証の指輪】も知らないし【聖教会】も知らないって、いくらなんでもおかしい……


 やばい、嫌な汗をかいてきたぞ


「レイくん、やっぱりはっきりと確認しないとダメかもしれませんよ」


「うん……僕もそんな気がしてきた」


 それから自分とテレーザさんは団長のダリエスさんに【聖教会】や【認証の指輪】がどういうものかなどを詳しく説明したのだけど、全く聞いたこともないと言われてしまった。


「それじゃあ、【認証の指輪】を付けていないって事は【職種】は取得していないのですか?」


「【職種】?」


「【魔法剣士】とか【格闘家】みたいな……」


「ああ【適性職】の事か、それから【科学魔導研究所】に行けば取得出来るだろ」


「【適性職】? それに【科学魔導研究所】? それはいったい?」


「……なんだか君達の住んでいる地域とでは常識が違いすぎる気がするな」


「詳しく聞いても良いですか?」


「ああ、まず君達位の年齢になったら、【科学魔導研究所】にて【魂適性検査】を受けるんだ。その検査の適性値によっていくつかの【適性職】が分かるんだが、大体の子供は【適性職】の中から好きな【適性職】を選び、学校で能力を伸ばしていくんだ。例えば俺は身体が丈夫になったり、身体能力が上がる適性を持っていたから【盾使い】の【適性職】についたんだ。そして、そこから【魂装】を取得した事により【適性職】が【大盾使い】になったんだが、分かるか?」


「えっと、言っている事は分かるのですが、僕達の知っている常識からはかなり違うので……」


「そうか……ならやはり、別の大陸から飛ばされてきたのかもしれないな」


「別の大陸なんてあるんですか?」


 それって【イーストエンド】や【ウエストエンド】などの大陸以外にも大陸があって、自分達はかなり離れた別大陸に飛ばされたって事か?


 それならば常識が大きく違っていたりしても仕方ないのか?


「ああ、いくつもの大陸があるぞ。まあ、今の状況でどれぐらいの大陸が人類の生存圏になっているかは分からないがな……」


「レイくん、私は別大陸があるだなんて聞いたことがありません」


「それは君達の年齢では知らないだけだろう。俺ですら別大陸の知識なんてほとんど無いからな。というか、別大陸に行くには飛空艇に乗るしか方法はないから、やはり冒険者登録とかして資金を稼がなくては無理かもしれないな……まずは職業案内所に行って、【科学魔導研究所】を紹介してもらうのが良いかもしれないな」


「分かりました。とりあえず【ジュピリアス】に着いたら【職業案内所】に行ってみます」


「ああ、それが良いだろう」

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