第393話 魔狼フェンリル

 自分は犬の様に鳴く小さな犬を持ち上げながら【鑑定】してみる。


【名前】未設定

【種族】フェンリル

【性別】メス

【年齢】0歳

【能力】ハウリング、月下の牙

 ※レイの眷属


 うん……これはもう魔狼ではないな……


 ダンジョンから出たことで身体が小さくなったのか、魔狼からフェンリルになったことで種族がリセットされたからなのかは分からないが……


「レイくん! 可愛い魔狼ですね!」


 ワフッ!


「うん、小さくなったのは想定外だけど、連れて行くなら小さい方が便利なのかな?」


 まあ、大きければ街中などで移動制限があるかもしれない代わりに移動時は自分とテレーザさんを乗せて走れたら、一気に【スカウトフォート】へ行けたかもしれないが、仕方ない。


「魔狼がダンジョンから出られましたけど、名前はどうするんですか?」


 名前か……


 毎度毎度、名前には苦労している気がするが……


 メスのフェンリルだから……フェリル?


 いや、フェリス……うーん、何か違う気がするな……


「よし、こいつはフェリにしよう」


 ワフッ!


「おっ、気に入ったか?」


そう聞くと、フェンリルは自分の周りを嬉しそうにクルクルと走り出した。


珍しく、自分のネーミングで一発目から気に入ってくれて、ちょっと自分も嬉しくなる。


「フェリですね、これからよろしくね」


 ワフッ!


 フェリはテレーザさんにも懐いており、しっぽをパタパタしながら飛びつく。


 フェリは小さくはなったけど、【能力】を既に使えるんだよな……多分だけどダンジョン攻略時には【能力】を使っている感じは無かったから、ダンジョンを攻略した事でフェンリルになったと考えられるかもしれないな。


「フェリ【能力】は使える?」


 ワフッ! 


 フェリは大きく頷いたので、【能力】を使えるって事だろう。フェリの使える【能力】は2種類あって……


 ・ハウリング 目の前に衝撃波を展開する。

 ・月下の牙  気配を薄くする。


「それじゃあ、あの的に向かって【ハウリング】をやってみて」


 自分は的として皮製のボールを取り出し、少し離れた場所に放り投げる。


 ハウリングは衝撃波を出すのだから、あれくらいなら余裕かな?


 ダンジョンボスの時はかなり強かったから、小さくなってもかなり強いんじゃないかな?予想していた。まあ、弱くても可愛いから良いんだけどね。


 フェリは自分の指示を聞くとボールの近くまで走っていった……あれ? 指示が理解出来ていなかったのかな?


 ワオオォー!


 フェリはボールから1メートル位離れた距離から叫びだすと、ボールは衝撃波によって風船みたいに割れてしまった。


「おお! 射程距離が短いのは想定外だったけど、威力は高いのかもしれないね」


「あんなに小さいのにフェリは凄いですね!」


 ワフッ!


「レイくん、その犬は……? それと魔狼はダンジョンから出られなかったのかい?」


 あ、ダリエスさん達がダンジョンから帰還したみたいだ。


「ああ、ダリエスさん。この子があの魔狼ですよ。何故か小さくなっちゃいました。あと名前はフェリにしました」


「ほう、ダンジョンから出たら小さくなるのか……隣街に行ったら職業案内所でフェリは登録しないとな」


「職業案内所ですか、それって僕達も登録出来るんですかね?」


「ん? そういえば2人の年齢はいくつだ?」


「僕達は10歳ですよ」


「……それは職業案内所に聞いてみないと分からないな。2人の年齢だと学校に通っている時期だからな……」


 やっぱり学校に通っていないのは良くないのかな……しかし、学校に通ってしまうと帰れるまでに何年かかるか分からなくなってしまうから避けたいんだよな……。

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