第392話 魔狼ダンジョン攻略後 ②
冒険者達がダンジョンコアの浄化作業というのを見ながら、自分とテレーザさんは団長からダンジョンの暴走状態について聞いていた。
「このダンジョンが暴走状態になった原因は急激な【魔素】濃度が上がってしまい、ダンジョンコアが狂ってしまったからなんだ」
「この地域の【魔素】濃度が高いのは元々じゃなかったんですね?」
「ああ、こんなに【魔素】が濃くちゃあ、【科学魔導具】も動作が安定しなくてな……【科学魔導武器】さえ使えていればダンジョンボスにも犠牲を出さずに勝てたんだけどな……流石に動作の不安定な武器は実戦では使えないからな」
「【科学魔導具】ってなんですか?」
団長はサラッと【魔導】を口にしている事にもびっくりしたが、【科学魔導具】や【科学魔導武器】など、聞いたことの無い単語が連発してびっくりしてしまう。
「なんだ? 【科学魔導具】も知らないってどこの辺境から飛ばされてきたんだ? その年で【科学魔導具】を知らないって……いや、レイくんの使っていた巨大な鎧は【科学魔導具】だろう?」
「あの鎧は【魔法具】です」
まあ、実際には【魔導具】だけど、もしかしてこっちの地域では【魔導具】を【科学魔導具】って言うのかな?
呼び方も似ているから、あり得るかもしれないな……
「【魔法具】? さっきも【認証の指輪】がどうとか俺の知らない単語を言っていたが、本当にこことは違う文化地域から来たんだな……」
「えっ、【認証の指輪】を知らないんですか? こんな感じの指輪ですよ?」
【認証の指輪】を知らないってどういうことだ?
「うーむ、見せられても見たことは無いからな……どういった性能の指輪なんだ?」
「えっと、【職種】を取得出来たり、ダンジョン内で死んでも復帰出来たり、通貨の代わりにもなったりします」
「ほう……なるほど、学生専用の【科学魔導具】って事か。しかし、変わったことする地域もあったものだな……」
「えっ、学生専用ではなくて……」
団長は何か勘違いしてしまった気がするので、訂正しようとしたらテレーザさんから待ったがかかった。
「レイくん、団長は本当に【認証の指輪】などをを知らないみたいなんです……」
「そんなことってあるの?」
「今はそういう事だと納得するしかないです」
「おっ、そろそろダンジョンコアの浄化が始まるみたいだな」
冒険者達は4つの【科学魔導具】をダンジョンコアの四隅に置き、【科学魔導具】に【魔力】を流し始めた……
ちなみに、ボスを倒した後にダンジョンコアは第10階層の中心部に突然沸いてきた。
話によれば、ダンジョンコアはある程度の時間が経過するとダンジョンボスを作りだして消えるらしい。
だから浄化作業もダンジョンボスを作り出す前にやらないといけないから忙しそうだった。
あの4つの【科学魔導具】は聖属性の回復魔法っぽい効果を発揮するものみたいで、あれが浄化効果があるのか……
それからしはらくしたら浄化作業は終わったらしく、どす黒かったダンジョンコアは綺麗な透明になっていた。
「レイくんとテレーザさんはこれからどうする? 良かったら一緒に隣街まで行かないか?」
「是非、お願いします」
自分達はダリエスさんの提案は有り難いと思い、一緒に隣街まで行くことになった。
自分の【オルタナティブアーマー】はたぶん材料を確保出来るまで修理出来ないだろうから、もし自分とテレーザさんだけでは対応仕切れないトラブルが起きたら詰んでしまうからな……
「それで、レイくんが【テイム】した魔狼?は一緒に着いてくるんだよね?」
「あっ、それなんですが……この子はちゃんとダンジョンから連れ出せるか不安なんですよね。ダンジョンのモンスターを【テイム】したのは初めてなので」
「まあ、俺もモンスターを【テイム】したなんて話は初めて聞いたが……あの凶悪なボスを倒せたレイくんなら、もしかしたら出来てしまうのかなと思えてしまうから不思議なもんだな」
「あのボスを倒せたのは巨大な鎧型の【魔法具】があったからなんですよ、それも今は壊れてしまったので、足を引っ張るかもしれないですが……」
「ああ、あの巨大な鎧か……あれが壊れてしまったのは戦力ダウンかもしれないが、足を引っ張るなんて考えなくていい、俺達は既に君達に命を救われているんだからな」
「ありがとうございます、それじゃあ先にダンジョンから脱出します」
「ああ、俺達も準備が出来次第行くから待っていてくれ」
自分達は先にダンジョンコアに触り、攻略したダンジョンの出口に転移される。
ダンジョン内での復帰は出来なくても、ダンジョンコアから外には一瞬で出れるみたいで安心した……
しかし、途中の階層から入口に戻る手段は、ダンジョンコアみたいなサブコアの設置されている階層に到達しないとダメらしい。
ちなみに魔狼ダンジョンにはサブコアが無いレベルの小さなダンジョンって事らしい。
「って、あれ? 魔狼はどこ行った?」
出口周辺を見回しても巨大な魔狼の姿は無く、テレーザさんしかいない……
やっぱりダンジョンのモンスターは、ダンジョンから出ることは出来なかったのかな?
ダンジョン攻略の後半からは魔狼に愛着が湧いており、既に名前も考えていたのに、残念だな……
ワフッ!
「えっ? 魔狼の鳴き声?」
自分は鳴き声のする足元に視線をおとすと、真っ黒な可愛い犬がしっぽを振りながら、目をキラキラさせていた……
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