第387話 ブラットへの課題 ②

【ブラット視点】


 俺はパン屋の近くにある広場で、ニナさんに剣技を教えていたんだが、禍々しい気配が近付いて来たので鉄の剣を構える。


「くっ、これはヤバイかもしれないな……」


 魔獣の様な獰猛な気配なんだが、カーラ先生から感じる威圧感を数十倍にしたような絶望的な気配だった……


 なんで街中にこんなやつが?と思っていたのだが……向こう側から歩いてくる大きさ男を見て、一気に気が抜けてしまった。


「オヤジ……?」


「おう、久しぶりだな、ブラット。元気だったか?」


 オヤジは真っ赤な鞘に納まった剣を肩に担ぎながら歩いて来た。


「……ああ、俺は元気だが、何でオヤジがって何だよ、その禍々しい剣は……」


 俺がヤバイと思った気配は魔獣でも人でもなく、オヤジが持っていた剣だった……


「ほう、この剣の気配を感じ取れる位には成長したか……」


「あ、あの、ブラットくん!? もしかしてブラットくんのお父さんですか!?」


「ああ、俺のオヤジだよ」


「なんだブラット。可愛い彼女が出来たのか?」


「か、彼女だなんて、と、とんでもないです! ブラットくんはうちのパン屋の常連客なんです! だ、たから友達です! ……今のところは」


「そうだぜ、オヤジ。彼女だなんてニナさんに失礼だろ……」


 ボコッ


「いってぇ」


 オヤジはいきなり俺の頭を殴ってきた……オレが何をしたって言うんだ……


「はぁ、レイくんもアレだか……うちの息子も同じだったとはな……ニナさん悪いな」


「い、いえ……」


「何で急にレイの話になるんだ?」


「まあ、自然と気付いて貰うしかないか……それで俺がここに来た本題は、この剣をお前に預けるためだ」


 そう言い、オヤジは持っていた真っ赤な剣を俺に渡してくる。


「この剣は?」


 剣を渡されただけで精神がかきむしられる様な気持ちになり、投げ捨てたくなる気持ちを抑えながら何とか持ち続ける。


「それはちょっと悪さをしていた火龍の魂を封印した宝玉を元に俺が打った魔剣【ベヒーモス】だ。本来はお前には持つのは早すぎる武器なんだが、エリーから早めに【ベヒーモス】に慣らしておいた方が良いと言われて、お前に渡すためにワザワザエリーと共に来たんだ」


「エリーおばさんも来ているのか?」


「ああ、エリーはエレナちゃんにも【ベヒーモス】同様に俺が打った別の魔剣を渡しに行っている」


「ってことは……本当に【ラグナロク】は来るのか?」


「いつになるかはハッキリしないが確実に来る……だからそれまでにお前はその剣を使いこなせる様になっていろ。まあ、最初は鞘から抜くことすら出来ないだろうがな……もし剣が抜けたら一度俺のところに戻って来い」


「ああ、分かった……」


 昔からエリーさんには【ラグナロク】について教わっていたが、まだ確定ではないと言われていたから随時先の話かと思っていたけど、オヤジが剣を渡してくるってことはそれだけ【ラグナロク】が近いって事を物語っているのだと実感してしまった。



『くそっ……ガインならまだしも、こんなガキに使われるなんて……』

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