第386話 ブラットへの課題

【ブラット視点】


 俺はニナさんに剣技を教える為、パン屋近くにある広場に来ていた。


 広場に来たのが早かったからか、まだニナさんは来ていなかったので芝生に横になって待っていようと思った。


 レイとテレーザさんが行方不明になって2週間が経過していた……


 レイの事を良く知るセシリアさんが無事だと言っていたが、レイの事だからまたよく分からないトラブルに巻き込まれているんじゃないかと心配していた。


 まあ、俺は多少事情を聞いたから無事なのを知っているが、クラスメイトには何故かレイとテレーザさんは原因不明の行方不明という事になっていて、クラスメイトの中では秘密結社の実験に巻き込まれて時空の狭間に飛ばされたとか、レイがコーデリアさんとシンシアさんを追いかけて隣国へ行ったのをテレーザさんも追いかけて隣国へ行き泥沼関係になっているとかいろいろな噂が飛び交っていた。


「ブラットくん、すいませんお待たせしました!」


 考え事をしながら寝ころんでいたらニナさんが来たみたいだ。


「ああ、俺が早く来ただけだから気にしなくていいよ。さてと、とりあえず木の剣の素振りからやろうか」


「はい!」


 最初ニナさんの他にも友達2人を剣技指導しようと考えていたんだけど、結局友達2人は別の予定が忙しくなり、剣技を習う時間が作れなくなったみたいで、ニナさんだけを教える事になっていた。


 そしてニナさんに剣技を教えて分かったのだが、ニナさんに剣技の才能はほとんど無かった……けどやる気だけはあったので昔のレイを思い出し、もしかしたらレイみたいに剣技を別の方向で活用するかもしれないなと思いながら教えていた。


 あと、ニナさんの場合は護身術がメインなので基礎体力作りになればいいかなとも思っていた。


「はぁ、はぁ……パン屋で力には自信があったんですけど……木の剣を振るって、やっぱりキツいですね……」


「慣れたらそうでもないけど、初めてやる人にはキツいかもしれないな。レイも最初はニナさんみたいな感じで全然筋肉とか無かったからな」


 そういえば、学校に通う前の頃のレイは筋肉とかも無いし、身体自体を動かすのも苦手だったなと思い出す。


「あんなに強いレイさんがですか?」


「この前なんて2人だけでログハウスを作ってましたよ?」


「ああ、あれは腕力じゃなくてレイのスキルというか無属性【魔法】だな」


「やっぱり何か凄い特技があるんですね……私は何にも特技が無いから羨ましいです」


「ニナさんは美味しいパンを焼けるじゃないか。俺はそれだけで立派な特技だと思うぜ」


「ありがとうございます! ブラットくんが気に入るパンをもっと作れるように頑張りますね!」


「ああ、楽しみにしてるぜ……」


 な、何だ……この禍々しい気配は……?


「ブラットくん、どうしたのですか?」


「ニナさんはこの気配が分からないのか?」


 息苦しくなるような、この気配はヤバい……


「……いえ、気配ですか?」


 広場にいる他の人を見てもニナさんと同じで全く気にしている様子は無い……?


 これは俺にだけ向けられているものなのか?


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