第385話 ジュラムス 上位魔狼 ④

 自分とテレーザさんは巨大化していく魔狼をどうしたら良いか迷いながらも魔狼は意識が無いので見守っていた。


 ちなみに魔狼の大きさは約2倍になっているし毛色は真っ黒になっているので、知らない人が見たら完全に普通の魔狼には見えないレベルになっていた。


「さてと、これで魔狼が襲って来たら倒せなくはないだろうけど、面倒かもしれないな……」


「あっ、魔狼がちょっと動きましたよ! やっぱり死んではいなかったんですね」


 巨大化した魔狼は起きあがろうとするが、自分の【魔導腕】により完全に拘束されているので、身体自体は全く動かせず、首を動かせるだけだった。


 自分の拘束が有効なのが確認出来たのは、自分にとって安心材料かなと思った。


 くうぅん……


「れ、レイくん……魔狼がつぶらな瞳でこちらを見てきます……これは破壊力抜群な可愛さです……解放してあげても良いんじゃないですか?」


「う、うん。テレーザさんの言いたいことは非常に分かるんだけど……解放するのは危険じゃないかな?」


 これはもう狼というよりは巨大な可愛い犬みたいな表情で身体をバタバタさせていた……


「この魔狼からは嫌な気配を感じないので大丈夫な気がします……やっぱり一度解放してみませんか?」


「テレーザさんがそう言うなら解放してみようかな」


 念の為、魔狼の全方位に【魔導壁】を展開してから魔狼を拘束していた【魔導腕】を解除すると、魔狼はしっぽを振りながら自分に飛びかかってくるのだが……


 ゴンッ!?


 魔狼は顔面から【魔導壁】に突っ込み、崩れ落ちる……


 くうぅん……


 魔狼は弱々しい鳴き声と共に哀しげな瞳で自分を見つめてきた……


 うーん、これ程懐いている感じの表情を出しているので、自分はほほ【テイム】が成功していると判断し、【魔導壁】を解除してから魔狼に近寄り頭を撫でて上げる。


 そうすると魔狼は嬉しそうな表情で自分に抱きついてくる。


「魔狼は大丈夫そうですね!」


「うん、とりあえず【テイム】は成功したと思って良いかな」


 ワフッ!


「レイくん、名前はどうするんですか?」


「えっ? 名前?」


「【テイム】した魔獣には名前をつけるものじゃないんですか?」


「名前かぁ……それはダンジョン攻略してからにしようかな……とりあえずは即席の戦力が出来たから、冒険者達を追いかけよう」


「分かりました!」


 もしかしたら、この魔狼はダンジョンでしか長時間生きていられない可能性もあるから、あまり愛着を持つと別れが辛くなりそうなんだよな。


 しかし、それを聞いた魔狼は凄くショックを受けたようにしっぽをダランと垂らしてしまった。


 この魔狼もそうだが【テイム】した生き物は言葉を理解出来る様になるものなのかな?


 こんな事なら普通の【テイム】はどんなものなのか聞いておけば良かったかな……


「まあ、そんなに落ち込むな……もし無事にダンジョンから出られたら名前をつけるからさ」


 そう言いながら魔狼の頭を撫でて上げる。


 ワフッ!!


 そしたら魔狼は嬉しそうにしっぽをパタパタと振って自分の周りをクルクルと回りだした。


 今までペットは飼ったことがなかったけど、ここまで懐いてくると可愛くなってくるな……

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