第384話 ジュラムス 上位魔狼 ③

 自分とテレーザさんは魔狼ダンジョンの第1階層で1匹の魔狼を【魔導腕】で拘束していた。


 この魔狼を拘束した理由は【テイム】スキルを試す為なのだが……


 魔狼の頭に手を当てて【魔導】を流してみると、頭の中には脳みたいな部分はあるが、この脳は見た目だけ機能していないダミーだというのが分かった。


「ダンジョン内のモンスターは本当に魔獣を模しているだけなのかな?」


ダンジョン内の魔獣は倒すと【魔素】になって消えたりするので、前々からどういう生態なのか、疑問には思っていたけど、あまり考えないようにしていたのだけど、まさか脳内がダミーだとは思わなかったな……


「【テイム】は出来そうですか?」


「うーん、以前に【テイム】した時は動物の脳部分に【魔力】を流すと成功したんだけど、この魔狼にはその部分が無いから分からないな……もうちょっと調べてみるよ」


本当はじっくり調べたいところだけど、冒険者達を追いかける目的があるのであまり時間はかけられないから、最初から【魔導】全開でやることにした。


 自分は更にモンスターの体内に【魔導】を流していくと、心臓にあたる中心部に高濃度の【魔素】が溜まっている丸い球みたいなのがあるのが分かった。


 これがモンスターを動かしているコアみたいなものなのかな?


 このコアが動物の脳にあたる部分だと判断し、【魔導】を流し始めると……


 グルルゥ……


 魔狼は【魔導】に抵抗しているのか、苦しみながらバタバタと暴れ出した。


 ……何か魔狼を虐めているみたいで、何だか自分が悪者になった気分になり気まずい感じになってきたので、止めるか?と考え始めた時に魔狼は突然、動きを止めてグッタリしてしまった。


「あっ、殺しちゃったか……?」


 もしかして動物に【魔導】を流し込むのは大丈夫でも、モンスターに【魔導】を流すのは攻撃にあたるのかな?


 そう考えると【魔導】を自分を中心として波の様に撃ち出したら、モンスターにも有効打になるのかもしれないなと思った。


「さてと【テイム】は無理だったみたいだから、普通にダンジョン攻略しようかね……」


 自分は魔狼が全く動かなくなってしまったのを確認し立ち上がる。


「レイくん、この魔狼は変ですよ」


「えっ、どこが変わったところがある?」


「魔狼が動きを止めてから数分は経過しているのに【魔素】と素材に変換されないのはおかしいです。街中でしたら【魔素】になるのが遅くても分かりますが、ここはダンジョンの中ですから普通に考えたらもう消えていても良い時間だと思いますよ」


「ああ、そっか。街中ではなかなか消えるのが遅かったから忘れていたけど、ダンジョン内ならもう消えている時間か……そしたらまだ倒してないのかな?」


 テレーザさんに指摘されて思い出したが、そうなってくるとまだ倒していないのか……ん?


「あれ? 何か魔狼が大きくなってない?」


「……私も先ほどから気のせいかな?と思ってましたけど、やっぱりレイくんも魔狼が大きくなっているように見えますか?」


 魔狼が動き出して、突然襲ってくるのも嫌なので【魔導腕】で再度拘束しながら確認しようとしたが、徐々に拘束している【魔導腕】が動かされているのが分かり、確実に今でも大きくなっているのが分かった……


「うん、これはヤバイ気がするからテレーザさんは離れていた方が良いかも……」


「いえ、何かあれば一緒に戦った方が良いので……」


 それから魔狼自体は動きもせずに死んでいるようだったが、躯だけは大きくなっていき、元々のサイズから約2倍近い大きさにまで成長?していた。


 あと、魔狼は元々ダークグレーの様な毛の色をしていたのだけど、今では真っ黒な毛色になっていた。


 この色の変化は他の【テイム】に成功した猫や蜘蛛と似ていたので、もしかしたら【テイム】に成功したのかな?とも思った。


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