第382話 ジュラムス 上位魔狼
自分とテレーザさんが魔狼退治を始めて10分位が経過した頃、門周辺にいた魔狼はほとんど倒され【魔素】に変わっていっていた。
通常、ダンジョン内に出てくるモンスターは【魔素】により疑似生命体として魔獣や植物、アンデッドなど多種多様な敵を再現し、倒したモンスターは報酬だけ落としダンジョン内に吸収され、また新しいモンスターに作り替えられるとカーラ先生が言っていた。
この場合、【魔素】で作られたモンスターが外に出てきてしまっているのだが、外で【魔素】になった分はダンジョンに帰るのだろうか?
もし、【魔素】がダンジョンに帰らないのなら、ダンジョン外でずっとモンスターを討伐していればいつかは【魔素】切れになってダンジョンの循環が破綻するのではないかと思った。
「この周辺の魔狼はほとんど倒したね、あっ、テレーザさん、肩を怪我してるよ、ポーションを使っちゃってよ」
テレーザさんをよくみると肩に大きめな爪の傷痕出来ていた。
「これくらいは自然に治るので大丈夫ですよ」
「いやいや、血が結構出ているし、そのままだと傷痕になるかもしれないから、ポーションはどんどん使って欲しいかな」
ポーションなんて材料さえあれば作れるんだし、傷痕が残るくらいなら使って欲しいと思った。
テレーザさんはちょっと遠慮気味にポーションを使い始めると、徐々に傷が消えていった。
「レイくんの持っている回復ポーションは性能が高いのでかなり高級品なんじゃないですか? 軽い怪我程度ならつかわなくても平気……」
「いや、このポーションは僕の手作りで、材料も高くないから気軽に使って大丈夫なんだよ。【ストレージ】にもまだ在庫はあるしね」
「ポーションまで作れるなんて凄いですね……それで、これからどうしますか? 冒険者の集団は門が開けられたらすぐに魔狼を倒して【ジュラムス】へ入って行きましたけど、私達も助けに行くなら門が閉まる前に入らないと……」
「迷うな……しかし今の状況なら無理して門から入らなくても壁から入れるんじゃないかな?」
最初は【認証の指輪】に履歴が残るかもしれないから、勝手に入るのは避けようと思ったけど、既に【ジュラムス】は履歴とか気にしている状況では無いから、壁から無理矢理侵入しても変わらない気がした。
「いえ、多分ですが門以外からの侵入は無理かもしれないです」
テレーザさんはそう言いながら足元にあった石を右手に持ち、思いっきり街の方へと投げた。
何をしているのかな?と思ったが、投げた石が壁の上空を通り越して街に入ろうとした時、見えない壁みたいなものにより投げた石は弾き飛ばされていた。
「あれは……」
「多分、結界みたいなものですね、魔狼が壁を乗り越えようとしていた個体もいましたが、弾き返されているのが見えましたから、街に入るなら門からしか無理かもしれないです」
「そうなのか……」
門周辺を見ると魔狼により殺されたであろう倒れている冒険者が8人いた……
あれから街中にいる魔狼を倒していけば無事に収まるのかもしれないが、不安が残るんだよな……
「テレーザさん、助けになるかは分からないけど街中へ入ろう!」
「分かりました!」
自分とテレーザさんは街中に入り、魔狼がいないか確認しながらゆっくりと進んでいるが、見えるのは破壊された街並みだった……
昨日の夜に【魔導球】で探索していた時よりも住宅などがボロボロになっているので、魔狼などは夜中から朝方にかけてダンジョンから出てきたのだと推測が出来たのだが、それなのに朝に開門する予定だった場所にあれだけの魔狼が集まるのはおかしいと思った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます