第381話 ジュラムス崩壊

 団長と呼ばれるおじさんの話では暴走状態になっているダンジョンは出入りが自由になってしまうせいで、内部のモンスターでさえ外に出れてしまう危険性があるらしい。


「ちょっと相談してから決めても良いですか?」


「ああ、構わないが我々に着いてくるなら街の門が開くまでにしてくれ。街の門は一度閉めてしまうと一週間は開けない様になっているらしいからな」


「分かりました」


 自分とテレーザさんは少し離れた場所に移動して、どうするかを相談する。


「テレーザさんはどうしたい?」


「私としてはレイくんと共に隣街へ移動してしまうのが良いと思います。多分、私たちがダンジョンに入っても足を引っ張る気がしますので……それに私達なら数日かかっても徒歩で隣街へ移動するのに問題ないと思います」


「まあ、そうだよね。僕も似たような意見だから、徒歩で隣街を目指そうか」


 若干、ダンジョン攻略をしてみたい気はするが、今はテレーザさんもいるし、安全な街に行くのが優先だろうと思い、団長から隣街への行き方を教わり【ジュラムス】を後にする事にした。


「まさかダンジョンが暴走状態ってのになる可能性があるなんてね……学校では習わない事が多くてびっくりするね」


「……ちょっと違う気もします」


「えっ?」


「どこのダンジョンでも暴走状態になるのなら、もっと噂とかで広まっていてもおかしくない気がするんです。それに私は一般人は教わらないような事も教わっていますが、ダンジョンが暴走状態になるなんていう重要な事を教わっていないのが気になります」


「まあ、いろいろ考えたら気には……」


 ワォオォォン!!


「「えっ?」」


 突然、背後から複数の遠吠えみたいのが聞こえて来たので、ビックリして振り返ると【ジュラムス】の門前で魔狼達と戦う冒険者の光景が目の前に展開されていた。


 本来、ベテランの冒険者たちなら魔狼位は簡単に倒せるのだろうが、魔狼の数が思っている以上に多くて危険な状態だった。


 冒険者たちは人数で言えば30人以上はいたはずだけど、魔狼の数は単純に10倍以上いそうな感じに見えた。


「テレーザさん、助けに入ろう!」


「はい! ですが単独行動は危険なので気をつけて下さい!」


「うん、あと今のうちにテレーザさんにも回復ポーションを大量に渡しておくよ」


「ありがとうございます!」


 自分とテレーザさんは冒険者たちが取りこぼした魔狼を倒す事に集中した。


 それは自分の攻撃スタイルが密集している場所は苦手なのと、テレーザさんが多数の敵と戦うのは苦手という理由からだった。


 それにしても魔狼が門の開くのを待っていて、開くと同時に一斉に襲ってくるなんて知能があるのだろうか?


 自分の知る魔狼は集団で襲って来るとしてきても、知能を感じる様な行動をする事は無かった。


 それから自分は射程範囲の魔狼を倒すため、【魔導剣】を頭部めがけて高速回転させて撃ち出していく。


 この数日は複数の魔犬ばかりを相手にして倒していたので、如何にして効率よく複数の魔犬倒していくかを考えた結果、高圧縮して硬度を上げた【魔導剣】を高速で撃ち出し、更に回転を加える事で貫通力が上がり、頭部に当たりさえすれば爆散するほどの威力になるのが分かった。


 これは魔獣にしか試せない一撃必殺の攻撃で、本来なら【魔力】消費が激しいのだが、無限に近い【魔導】を使える自分ならではのやり方だろう。


 ただ一つ注意しなくてはいけないのが、この【魔導剣】は射程範囲外に出ても多少は飛んでいってしまうので、狙った先に人がいればその人まで攻撃してしまうかもしれないので、人のいない方向に撃たなくてはいけない点であった。


 それから5分後……


「あれ? 魔狼の死体が消えてる?」


 自分の射程範囲の魔狼を倒すのに集中していて気が付かなかったが、先ほどから倒した魔狼の死体が無くなり、魔狼の死体をよく見ると徐々に【魔素】へと変換されているのに気が付いた。


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