第380話 ジュラムス ⑤
自分とテレーザさんは青年の案内で、強そうな雰囲気のおじさんと女性の2人と話をする事になった。
「君たちふたりは森のある国から来たと聞いたが、本当かな?」
「はい、街の近くに森はありましたが、森があるのは珍しいんですか?」
青年もそうだったが、このおじさんも森というワードに驚いた表情をする。
「ふむ、その質問をすると言う事は本当にこの国の者ではないのだな……まず、この国は【グラビエス】という名前だが知っているかな?」
「いえ、知りません」
「私もしりません」
国名が【グラビエス】……うん、初めて聞いたよ。自分よりもこの世界について博識なテレーザさんも【グラビエス】という名前はわからないみたいだった。
「そうか……まず、この【グラビエス】内には森と呼ばれる場所は存在しない。というよりもこの国では大きな木が育たないという理由もあるのだが……君たちはどこの国から来たのだ?」
「僕達は【スカウトフォート】という街の近くにある森から飛ばされてきました」
「ふむ……【スカウトフォート】か聞いたことは無いな……エリム、どうだ?」
「はい、私のスキルではこの子達が嘘をついている感じはありませんので、本当に他国から飛ばされてきたのだと思います」
エリムと呼ばれる女性はおじさんからの質問にそう答えたのだが、真偽を調べるスキルなんてのがあるのか?
【鑑定】スキルみたいに調べられている感じが無かったから気が付かなかった。
しかし、おかげで自分達の知らない場所から飛ばされたという信じがたい内容の話だったけど、信じてくれたのはラッキーだったかもしれない。
「そうか、君たちは街に入りたいと考えているみたいだが、この街に入る事は出来ないぞ……とは言っても隣街も遠いしな……どうしたものか……」
「【ジュラムス】に入れない理由はなんですか?」
「ん? ああ、この【ジュラムス】は魔狼ダンジョンを中心として発展した街なのだが、現在は魔狼ダンジョンが暴走手前になってしまい、非常に危険な状態になっていて街としては機能していないのだ。だから君たち子供が入っても危険なだけなのだよ」
「魔狼ダンジョンが暴走手前?」
ダンジョンって暴走状態になるものなのか?
「その調査隊として我々が来たのだが、暴走状態に関してはこれ以上は子供でも依頼を受けていない外部の人には教えられないのだ。それと本来なら安全な街まで送ってあげたいところだが、ダンジョンの調査が終わるまでは戻らないからな……」
「僕達は冒険者育成の学校に通っていたので、2人でも隣街の場所さえ教えてもらえれば行けますので大丈夫です」
「ほう、冒険者育成の学生か。しかし、歩くとなるとかなりの距離があるぞ? それに荷物もほとんどないみたいだが本当に大丈夫か?」
そうか、荷物は【ストレージ】に入れてしまっているので、自分とテレーザさんは見た目だけで言えば、武器も無い子供たちと言う感じに映るのか。
「団長、この子達を同行させるのはどうですか? このまま隣街まで2人で行かせるより我々と共にダンジョン攻略をした方が安全な気がします」
「いや、しかし……まだ冒険者になっていない子供をダンジョンに入れるのは……」
「そう言えば、冒険者登録していないのにダンジョンに入れるんですか?」
学生用のダンジョンなら仮登録でダンジョン内に入れるが、本来のダンジョンは冒険者登録をしないと入れない仕組みになっている筈だ。
「ああ、暴走状態のダンジョンは誰でも入れるんだ……そして、その逆も可能になってしまうから危険なんだよ」
「逆ですか?」
「ダンジョン内のモンスターも出れてしまうって事だ」
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