第378話 ジュラムス ③

 自分はこっちに来てから初めて発見した街の様子を【魔導球】を飛ばして探索してみたのだけど、街中は見て自分はこちらに飛ばされて一番の衝撃を受けた……


 なんだ?この街の発展具合は……?


 アスファルト舗装を見た時から違和感はあったのだけど、この街の発展具合は【スカウトフォート】とは数百年位の進化を遂げている感じだった。


【魔導球】経由なので、正確な素材は分からないが、家などの建物も木造やレンガ造ではなくて、コンクリート造っぽいもので、前世の記憶を持っている自分としては、日本のちょっと田舎の集落に来たというレベルではあるが、この世界に転生してから見てきた街の水準からすると段違いの発展具合だった。


 そこで疑問に思うのが、【イーストエンド】と【ウエストエンド】とで、ここまで生活水準が変わるものなのだろうか?


 お互いの地域で人の行き来が少ないのは分かるが、完成に分断されている訳ではないので、便利なものは取り入れているのではないだろうか?


 素材の関係で全てが再現出来ないからって理由でも無いと思うのだけど……


 街中を調べて、もう一つ不思議な点は家などは所々破壊されており、何者かに襲撃されたのではないか?という感じだった。


 あと、肝心の住民らしき姿が確認出来なかった。


 そして、この不思議な街は自分が想像していたよりも広くて、【魔導球】の探索範囲が街の中心部まで全く届かず、ほとんど調べきれなかった。


 その件をテレーザさんに話してみたけど、テレーザさんは半信半疑といった感じの表情だった。


「レイくんから見て、この街はそんなに発展しているのですか?」


「うん、【魔導球】経由だから正確ではないけど、【イーストエンド】とは全く違う進化を遂げた街って感じかな」


「それはおかしいですね……」


「おかしい?」


「はい、レイくんを疑う訳ではないのですが……私の教わった感じでは文明の差はほとんど無いはずです。街の特色に差はあっても、文明度合いは【聖教会】が管理していますから、片方の地域をひいきにする事は無いはずです……あっ、でも……」


「でも?」


 テレーザさんは何かを思い出したかの様に、話し始めた。


「【イーストエンド】に【帝国】があるのですが、師匠の話では【帝国】は【聖教会】からの独立を目指しているみたいで、独自の発展を遂げていると聞いたことがあります」


「【帝国】って名前は聞いたことあるけど、そんな国があったなんて初耳だよ」


「こういう話は一般人には出回りませんかね。それと街中に襲撃されたみたいという跡と人がいないというのが気になりますね……」


「僕が一人で街に侵入して調査してみようか? あの鎧の機動力なら早く戻ってこれるよ」


「今のレイくんは【認証の指輪】が機能しているから、勝手に入ると問題が起きるかもしれないので、出来れば止めた方が良いかもしれないです」


「あれって勝手に街中に入ると履歴が残るの?」


「はい、どんな感じで履歴が残るのかまでは知りませんが、そう教わりました」


「それも初耳なんだけど……」


 そんな事は学校で習っていない気がするんだけど……自分が聞き忘れたのかな?


「多分、貴族にしか知らせていない内容ですね」


「それって僕が聞いても良かったのかな?」


「(……それは将来結婚すれば問題無いですから)」


「えっ? 今、何て?」


 最後にテレーザさんはなにやら小声で話したので聞き取れなかったのだが、なにやら重要な事を言ったような気がした。


「いえ、何でもないです! と、とりあえずは朝まで待ってみませんか? もしかしたら、時間が遅くて門を閉めたかもしれませんし」


「え、あ、ああ、そうだね。今日はログハウスで休もうか……」


「はい!」


 結局は何を言ったか分からなかったけど、重要な事ではなかったのだろう。


 自分はログハウスの外でテレーザさん用の装備をどうするか考えており、テレーザさんの戦闘は素手による打撃、投げ、関節技になるので籠手と胸当て、すね当ての骨組みを【神木材】で作り、表面に【神紙】を張り付けようと思っていた。


 そして【神木材】を使おうと思ったら、材料が無くなっていたので飛ばされる前にセシリアに丸太を頼んでいたのを思い出す。


 周りを見渡しても草原なので役に立ちそうな木があるわけでも無いので、諦めるしかないかな。


 多分、街中に入れたとしても丸太を大量に仕入れるのは無理だろう。


 そう言えば、セシリアは上手くやってくれてるかな……?


「レイくん、ちょっと良いですか?」


 テレーザさんがラフな格好でログハウスから出てきた。


「ん? どうしたの?」


「遠くから狼の鳴き声みたいなのが聞こえませんか?」


「狼? どうだろう? 僕には聞こえないけど……テレーザさんが聞こえるかもしれないって事は近くにいるのかな、どっちの方角か分かる?」


 こっちに来てから夜中に魔獣からの襲撃は受けた事がなかったけど、自分より身体能力が全体的に高いテレーザさんが言うのなら間違いない気がする。


「……それが街の方角からなんです」


「街の中から?」


 方角さえ教えてくれれば【魔導球】を飛ばして探索しようと考えていたけど、街の方角かぁ。


「はい、正解ではないですが周りが静かなので、もしかしたらかなり遠いのかもしれないです」


「そしたら警戒だけしておけば平気かな」


 街の周辺を囲む壁は高さが15メートルはありそうな高さがあり、強度も高そうなコンクリートっぽい土壁なので、例え魔狼の集団が来ても街は安全だろう。


 あと町の反対側はかなりの距離があるので、こちらまで魔狼が来ることも無いだろう。

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