第377話 ジュラムス ②

 自分テレーザさんは馬車の向かったであろう方角の道を進んでいたのだけど、途中で道が二手に別れていてどちらに進むか悩んでいた。


「うーん、馬車の跡を探れれば良かったんだけど……」


「全く分かりませんね」


 このアスファルト舗装の様にしっかりと作られた道はいくつかの痕跡はあったけと、馬車がどちらへ移動したかなどの跡はほとんど無いので、どちらが正解か分からなかった。


「そうなんだよね、どうしようかな」


「レイくん、とりあえず左側に行ってみたらどうですか?」


「とりあえず?」


「はい、多分ですがどちらにも跡があるので、どっちに進んでも街に着けるんじゃないかなと思ったんです」


「なるほどね、僕達からしたら街に着ければどちらでも良いか……それじゃあ、テレーザさんの案で行こうか、もし駄目なら引き返せば良いしね」


「はい! 時間は沢山ありますからね!」


 まあ、3年以内に【スカウトフォート】へ着ければ良いから、テレーザさんの言うとおり長旅になるのだし、最短ルートばかり気にしていたら気が滅入ってしまうかもしれない。


 こういう見知らぬ土地ではテレーザさんみたいなポジティブな性格の人と一緒にいるのは非常に助かるなと思った。


 分かれ道を左に進むこと半日……こっちの道は違ったのかな?と思いながらも、道が続いているので何があるかは確認したいなと考えていた。


「それにしても、こんな草原ばかりの場所に街なんかあるのかな?」


 自分の生まれた【モロット】はあまり発展していない町ではあったけど、ちょっと移動すれば森などがあり、資源には困らなかったが草原ばかりの土地に街を作るメリットはない気がした。


「もし街があるとしたら、近くにダンジョンがある可能性もあるんじゃないですか?」


「ああ、そうか」


 何もない草原でもダンジョンがひとつあるだけで街を作る理由にはなるのか。ダンジョンさえあればいろいろな資源が手には入ったりするからね。


 ただ、それだと更に気になるのは人の往来が少ないことかな……?


 それから更に歩き、日が落ちてきたのでそろそろログハウスでも出すかなと思っていたら、街らしきものを発見した。


「テレーザさん! 街っぽいところを発見したよ!」


 更に進むと、街全体の大きさは分からなかったけど、外側を囲むように作られた立派な壁などを見た感じでは【チェスガン】並の街なのかなと推測した。


「レイくん、ちょっと雰囲気はおかしいですね……」


「うん、確かに……」


 街の入口まで来たのだけど、道から続く門は完全に閉められてはおり、門番の人もいないしどうしたら良いかなと思って周りを見渡すと目視した街の壁はかなり古びた印象を受け、活気というものはほとんど感じられなかった。


 自分が見てきた街ならば近づけば多少はにぎやかさが感じられるのだけど……人がいないのかな?


「封鎖された街なのかな」


「それだと門が閉まっているのは変じゃないですか? 閉鎖するなら門を封鎖する必要は無いですし、もしかしたら別の理由があるのですかね?」


 結局は今日中に街へ入る手段は壁を乗り越えて入る位しかないのだけど……知らない街に勝手に入るのは気が引けるが……


「今日は街の外にログハウスを設置して泊まるとして、とりあえず夜中に街の中を探索して状況を確認しておくよ」


「分かりました」 


 さて、街中に人がいればいいんだけどな。


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