第376話 ジュラムス

 自分とテレーザさんは平原にある真っ直ぐな舗装された道を歩いていた。


「テレーザさんごめんね、やり方を間違えなければ今頃はあの馬車に乗れていたかもしれないのに……」


「いえ、レイくんの判断は間違っていなかったと思うので気にしないで下さい。私も敵の強さや状況が分からない場合は同じ事をしたと思います」


「ありがとう」


 先ほど自分は【世界救済の光】と名乗る盗賊みたいな集団から馬車に乗っていた女子達を助けたのだけど、【オルタナティブアーマー】を知らない人達に自分と関連付けをさせたくない理由で、テレーザさんが隠れていた場所まで全速力で戻り、普通の格好をした旅のふたりがたまたま襲われていた女子達と遭遇する展開にしようと思って、女子達がいた場所まで早歩きで向かったのだけど……既にその場には馬車はなく、【世界救済の光】の盗賊達が流した血痕だけが残っていたのだ……


 まあ、そりゃあ盗賊に襲われた後なら仲間を引き連れて再度襲撃してくるかもしれないから、全力でその場から逃げるよね……


 そして自分は最初から【オルタナティブアーマー】を使わずにテレーザさんと一緒に全力を出していれば、窮地を救ってくれた子供達という事で街まで馬車に乗せてくれたかもと後悔していたのだ……


 もしかしてカーラ先輩並の強い奴がいたときを想定したのが完全に裏目に出てしまったのだ。


「それにしてもやっぱりレイくんは強いですね!」


「あれは完全に鎧のおかげだよ。生身なら相性が無ければテレーザさんと似たような強さだと思うしね」


 実際、自分はテレーザさんには勝てるけどブラットにはよく負け、ブラットはテレーザさんに負けるという綺麗な相性のトライアングルが出来ていた。


「私もレイくんとお揃いの鎧が欲しいですが、あれは私だと使えないんですよね?」


「うん、あの鎧は僕専用の鎧になっているから無理だね。それにあの鎧だとテレーザさんの長所が全く活かせない気がするよ?」


「残念です……」


 テレーザさんは本当に自分とお揃いの鎧が着たかったみたいで、がっかりしていた……自分としては【オルタナティブアーマー】が高性能でなければ黒歴史の塊みたいな鎧を恥ずかしいから着たいとは思わないんだけどな……


「それならさ、籠手とか動きやすい軽装はどう?」


「えっ、私用に作ってくれるんですか?」


 テレーザさんの表情はさっきとは真逆の嬉しそうな顔に変わる。


 表情豊かだなぁ。


「うん、一緒に長旅するわけだし、テレーザさんの戦力が上がれば自分も助かるから、何かしらの装備品は作ろうかなと思っていたんだよね」


「凄く嬉しいです!」


「一応、どんな装備が欲しいとか希望とかはある? ちなみに素材はあの黒い全身鎧と同じ素材になるよ」


「あの黒い全身鎧は金属製なんですか? 不思議な質感ですけど」


「実はあれ超レアな木と紙と少量の金属で出来ているんだよ、だから金属製よりは少し軽いかな」


「えっ、木と紙だったんですか? 全くそんな感じには見えませんでしたが……?」


 テレーザさんは聞き間違えたかな?という表情聞き返してきた。


 まあ、普通はそう思うよね……


 レアな皮の鎧とかはたまに見かけるけど、木の鎧とかましてや紙の鎧なんて聞いたことがないからね。


「うん、紙とかだけど強度は安い金属より遥かに丈夫で軽いんだよ」


「そうだったんですね! でしたら、私が欲しい装備品は……」


 テレーザさんから希望を聞き、その日の夜からテレーザさんの装備品を作る作業に取りかかった。

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