第374話 セシリアの奮闘 ②

【セシリア視点】


 私はひとりで【チェスガン】へ向かっていた。


 目的はマスターが行方不明になった事をマスターの両親に報告するためだった。


 マスターの両親は元々【モロット】に住んでいましたが、フローラ様が【チェスガン学園】の低学年に入学したのをキッカケに【セシリアショップ】を自宅に改良し、マスターの家族が住むことになった。


 【チェスガン】の街並みは以前マスターと暮らしていた頃とは違っていて、襲撃事件により大半の建物は建て直すか更地になっていた。


「あっ! セシリアさん!」


「フローラ様、お久しぶりです」


 まさか自宅へ向かう途中に【チェスガン学園】から帰宅中のフローラ様と遭遇するとは思いませんでした。


 フローラ様はまだ子供ながらに歌姫と呼ばれている美少女らしく、その噂をマスターが嬉しそうに聞いていたのが印象的でした。


「セシリアさん、お兄様はどこですか? 別行動なのですか?」


「いえ……詳しくは自宅に戻られたらお話しますが、ご両親はいますか?」


「お父さんとお母さんは家にいると思うよ。今日、お兄様が戻ってくるなんて聞いていなかったから、会えるのが楽しみ~」


 フローラ様がキラキラする笑顔でマスターに会えるのを楽しみにしているのを見ると、行方不明とは言いにくい雰囲気になってしまった。


「……」


 よく考えれば、マスターが行方不明と知って一番ショックを受けそうなのはマスターをとても大好きなフローラ様だというのを忘れていました……


 私は無事に【チェスガン】から帰れるのでしょうか?


 スキップをしながら笑顔で帰るフローラ様の後ろを歩きながら私達は、元セシリアショップの自宅に到着しました。


「お父さん、お母さん、ただいま! 今日、お兄様が帰ってくるよ!」


「あっ、いえ、フローラ様……」


「あら、セシリアさんじゃないの。まだ学校が休みにならない筈なのに……何かあったのかしら?」


「冒険者の学校だからその辺は自由なのか?」


「マスターの件で報告しなくてはいけないことがありましたので、私だけで来ました」


「えっ!? お兄様は来てないの!?」


「……セシリアさん、良くない話かしら?」


 う……ソフィア様の視線に、震えるはずのはない身体が若干震えて来ました……


「そうですね、私としてはあまり報告したくは無い内容です」


「まさかレイが大怪我でもしたのか?」


「いえ、マスターは無事なのですが……」


「あなた、じっくり聞いた方が良さそうだから、向こうのリビングで聞きましょう」


「ああ、そうだな」


 私はリビングに座ってから、マスターの身に何が起きたのかを説明する事にした。


「マスターはとある組織のお手伝いをしていたのですが、3日間前に組織に所属している少女を助けるための実験をおこなったとき、予想外の事故が起こりマスターと同級生が遠くの土地に飛ばされてしまいました」


「ち、ちょっと待ってくれ……いろいろぶっ飛んだ話なんだが……」


「私もいろいろ聞きたいけれど、まず遠くの土地に飛ばされてレイが無事だと言う理由は何かしら? レイとは連絡が取れてるの?」


「マスターと連絡は取れていませんが、私の能力によりマスターの状態だけは把握する事が出来るんです」


「そう……まずはレイが安全なら安心ね」

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