第372話 世界救済の光

 自分は【オルタナティブアーマー】を装着した状態で、争いの起きている場所まで一気に移動した。


 ズドンッ!


「な、なんだ貴様は……?」

「……この巨体は巨人族か? いや、それよりもその鎧は【魔導機兵】か!?」

「おい! 【魔導機兵】ならやべえぞ!」

「ああ、全員絶対に【魔導機兵】には攻撃するなよっ!」


「ああ、更に敵が増えてしまったのでしょうか……」


 自分は争っていた集団を直接確認してみると、明らかに悪そうな人相の武装集団がおじさん達6人と軽装ではあるけど高そうな装備を着た少女2人と護衛っぽい男が2人いた。


 おじさん達はあまり怪我はしていないみたいだが、護衛っぽい男2人は致命傷はないかもしれないが斬り傷ばかりで満身創痍といった感じだった。


 うーん。


【魔導機兵】ってなんだろう?


 自分以外にも【オルタナティブアーマー】みたいな【魔導鎧】を……あれ?


 このおじさんたちは【魔導】って言った?


 今まで【魔眼協会】以外で【魔導】について知っている人はいなかったのに……【ウエストエンド】では【魔導】の認識が広まってる?


 いや、今はそれよりも……この状況がどうにかしないとな。


 偏見で見たら、おじさん側が山賊で、少女達が襲撃されているお偉いさんの様に見えるんだけど……どうしたものか。


 とりあえず、声を変えて聞いてみるかな……間違えていたら大変だからな。


「コレハナンノアラソイダ……」


「しゃべった!? って事は【魔導機兵】ではなくて、やはり巨人族かっ!?」

「巨人族の貴様には関係の無いことだから、さっさと立ち去れ! 立ち去らないと貴様も殺すぞ!」


「どなたか知りませんが、助けて下さい! 突然、この者達に襲われたんです!」

「助けて!」


 やっぱり見た目通りの襲撃している悪役おじさん達と襲われている少女達って構図か……


「オマエタチコソ、ニゲルナラミノガシテヤル……」


 巨大な木の剣を地面に突き刺し、威嚇しながら警告してみる。


 これでおじさん達が逃げてくれたら助かるんだけど。


「この戦力差が分からないほど馬鹿な巨人族なのか? 俺達が引くわけ無いだろ」

「めんどくせえから、こいつも殺しちゃおうぜ!」

「そうだな、俺達【世界救済の光】は巨人族などに舐められる訳にはいかんからな、先に巨人族を殺すぞ」


 やっぱり無理だよね……


 どうしようかな、雰囲気からしてカーラ先生やマギリさんみたいな上級冒険者みたいな圧力は感じないから、いけるか?


 うん、とりあえずは先手必勝だな。


 いきなり手加減が出来るほど自分は強くないから、近くにいた一番弱そうなおじさんを弱めの回し蹴りする。


 ボコン!


 弱そうななおじさんは剣で回し蹴りをガードしたが、衝撃には耐えられなかったみたいで軽く10メートル位は吹き飛んで転がっていった……


「「っ……!?」」


 あれ?


 これは普通にいけるか?


 カーラ先生なら蹴りを防ぎながら反撃してきそうな感じだけど、やっぱりカーラ先生達よりは圧倒的に弱いのかもしれない。


「くそっ!」


 おじさんのひとりが槍で突き刺そうと突出してきたのを、木の剣で地面に叩きつけてへし折り、自分は槍を持っていたおじさんに向けてタックルをかます。


 全長4メートル位ある【オルタナティブアーマー】のタックルはかなりの衝撃らしく、槍を持っていたおじさんは地面にバウンドしながら吹き飛んでいき、起き上がる気配はなかった。


「くっ、こいつは強いぞ!」


「撤退する! 逃げるぞ!」


 おじさん達のリーダー格の男は鞄から硝子瓶を取り出し、地面に叩きつける。


 そうすると紫色の煙が辺り一面に広がっていき、煙が消えた時にはおじさん達も消えていた。


 まあ、視界をふさがれてもおじさん達を倒せたのだけど、人との無駄な戦いはしたくなかったので見逃すことにした。


 しかし、これは確実にミスったな……


 おじさん達がこれ位の強さならば、ワザワザ【オルタナティブアーマー】じゃ無くても、自分とテレーザさんだけで倒せたレベルだった。


 そして、本当なら助けた少女達から最寄り街の情報を聞きたかったんだけど、【オルタナティブアーマー】と自分を関係付けたくなかったので、とりあえずはテレーザさんのいる場所まで全力で逃げる事にした。


「あっ!! 待って下さい! 是非お礼を!」

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