第371話 道の発見

 自分とテレーザさんは海辺から陸地へ直進する事を始めてから5日目にしてやっと舗装された広めの道を発見する事が出来た。


「やっと道を発見出来たね……」


「ここまで来るのに1週間くらいかかりましたからね」


「僕は大丈夫だけど、テレーザさんはちゃんとした宿屋に泊まれる様にしないとね、あと服もね」


 自分は大抵の場所で寝ることは出来るけど、テレーザさんは貴族のお嬢様だからログハウスの硬い床にタオルを数枚敷いただけの場所に寝かせたり、【クリーン】があると言っても同じ服を着させるのには気が引けた。


「私は大丈夫ですよ? むしろずっとこのままでも……」


「えっ?」


 後半は急に小声になったのでよく聞き取れなかった。


「いえ、なんでも無いです! それよりも見たことの無い感じの道ですね? これは……石が敷き詰められてるんですかね?」


「……これはアスファルトに似ているな」


「えっ、レイくんはこれを知っているんですか?」


「うーん、僕の知っているものと同じかは分からないな……」


 この世界では、前世で使われていた様な技術は禁忌指定されているってペンザエモンさんに確認済みだから、こんなに堂々とアスファルトで舗装された道を作るだなんて、無理なはずなんだけど……どういう事だろう?


「レイくん?」


「ああ、ごめん。多分、僕の勘違いだと思う。それよりも問題はこの道をどっちに進むかだよね……」


 これはアスファルトに似ているだけで、全く別の加工方法なのだろうと思うことにした。


 これだけの道が作られているってことは、どちらに進んでもそこそこ大きな街には着くんじゃないかなと思うけど、出来れば情報収集したり出来るレベルの大きな街に行きたいなと考えていた、そして【スカウトフォート】へ行くための正確な帰宅ルートの情報を確認したいなと思っていた。


「左手の方角には山があるんで、右に行きませんか?」


「なるほどね……それはありかもしれないね」


 山はかなり遠くにあるけど、山ではない方が街につながるかもしれないという、テレーザさんの意見を採用して自分達は右手方向に伸びる道を進むことにした。



 それから道なりに数時間歩いていたら、遠くの方で争っている人達を発見した。


「テレーザさん、前方と争っている感じの集団がいるから注意して」


「どんな争いか分かりますか?」


「うーん、冒険者っぽい武装をした集団同士の争いかな……?」


 【魔導球】の探索では大まかな形しか分からないから、魔獣なら魔犬が何匹いるとか分かるんだけど、冒険者っぽい武装した集団までしか分からない、なので遠距離だとどういう争いをしているのか分からなかった……


 もう少し近くに行ければ詳しく分かるだろうけど……


「それだと争いに介入して良いのか分かりませんね。レイくん、どうしますか?」


「うーん、もし悪い組織と良い人達の戦いみたいなのだったら……助けに入りたいけど、全く分からないな……」


 非常に迷うな……


 仮に良い人達が襲われていたとしても、悪い人達が自分達の実力で対処出来るのか分からないから、相手の実力も分からないのに飛び込むリスクはな……


 自分だけなら逃げられるかもしれないけど……そうか、自分だけでいけば良いのか。


「テレーザさん、向こうの方に隠れて待機していてもらっても良いかな?」


「……もしかして、レイくんがひとりで行くんですか?」


「うん、僕が【オルタナティブアーマー】を装着した状態なら救助するとしても、戦力としては助けになるかもしれないし、逃げるのにも向いているからね」


「分かりました。私は隠れて待っていますね」


「うん、じゃあ行ってくるよ」


 自分は【ストレージ】から【オルタナティブアーマー】を取り出し、装着する。


 武器は状況によるかもしれないが、基本的には圧縮した木材を巨大な剣の形に加工したものを使い、強敵だった時にだけ【神木の小太刀】を使う予定だった。


 【神木の小太刀】は木材なのに予想外の攻撃力を発揮してしまったりと、制御不能な時がたまにあるので、基本的には人に対しては使いたくはなかった……うっかり人を圧殺とか撲殺はしたくないからな。

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