第365話 再び草原へ

 自分、テレーザさんは結局引き返し、草原を進む事にした。


 ウエストエンドの地図が分からないので、どれくらいの広さなのかとか、形状も分からないので、とりあえずはウエストエンドを丸い地形とした時に周りを攻めるよりは対角線に攻めた方が街に繋がる道に当たる確率が高いのではないかと考えたからだ。


「レイくんの細胞生成ってスキルは凄いですよね、あれだけ日焼けして真っ赤になっていたのに、肌が真っ白に戻っちゃうなんて……」


「若いうちに日焼けすると将来シミになっちゃうかもしれないから、治せるならすぐに治した方が良いんだよ」


 半日位、水着で遊んだせいで、その日のうちに自分とテレーザさんの皮膚は真っ赤に日焼けしてしまったので、【魔導細胞生成】を使い、肌の表面だけ再生させたのだ。


「レイくんってたまにおじさんぽい事を気にしますよね?」


「そうかな?」


 前世がおじさんだったから間違いではないから仕方ないかもしれないけと、テレーザさんにおじさんぽいって言われるのは地味に痛いかもしれない。


「でも、そんなところがレイくんっぽくて良いと思います」


「テレーザさんはおじさんぽいのが良いの?」


「そうじゃないんですけど、それを含めてがレイくんっぽいと言うか……」


「なるほど?」


「それにしても、この細胞生成は不思議な感じですが、もし良かったら毎日やってもらうことは出来ますか?」


「気に入ったんなら毎日やっても大丈夫だよ。」


「お願いします、何だか体内から力が湧いてくる感覚があるんですよね……何ででしょう?」


「へぇ、僕は何にも感じないけど……テレーザさんには良い効果があるのかな?」


【魔導細胞生成】は他の人にはあまり使った事がないから分からないけど、テレーザさんみたいなことを言う人は初めてだな。


この日から自分はテレーザさんに【魔導細胞生成】を使うことになったのだが、思わぬ効果がこのスキルにはあった……




【スカウトフォート】へ帰る道のりは長くなるだろうから、定期的に休憩を挟みながら移動していて、休憩中はフレイザードさんからもらった【認証の指輪】を【鑑定】したりしていろいろためしていた。


「レイくんは休憩中にいつも何をしているんですか?」


「ん? これはちょっとした実験かな……」


「それって【認証の指輪】にソックリですよね?」


 この【認証の指輪】を街に着く前に解析し、自分でも擬似的に【認証の指輪】を使える様にしたかったのだ。


「うん、実はとあるスキルの影響で僕の【認証の指輪】は機能しなくなってね、でもこれから知らない街とか入るときには【認証の指輪】が必須になるだろうから、どうにかならないかなと思って、知り合いから【認証の指輪】をもらったんだよ」


 本来は【魔眼協会】の人にしか言うつもりは無かったけど、これからテレーザさんとは長旅になるのだし、秘密にしておくよりは秘密を共有して助けてもらったほうが良いかなと判断していた。


「【認証の指輪】をくれる知り合いがどんな人か、非常に気になりますが……聞かなかった事にしておきます……それで、もう一度【認証の指輪】を付けてはダメなんですか?」


「多分だけど、同じ結果になっちゃいそうだから、悩んでるんだよね」


「そしたら……そのレイくんのスキルを制御するとかで何とかならないんですか?」


「ああ、スキルを何とかする方法か……」


 そう言われてみたら自分は【認証の指輪】をなんとかしようと思うことばかり考えていたな……


 テレーザさんの言うとおりで【魔喰】のスキルを封印するとかそっちの方向性を考えるのもありかもしれないなと思った。


「テレーザさん、ヒントをありがとう」


「いえ、レイくんに協力出来たのなら良かったです!」


 1人で考えるとやっぱり偏った思考になりがちだから、テレーザさんに相談出来たのは良かったなと思うのだった。


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