第362話 師匠

 自分は【ストレージ】からログハウスや食事を取り出し、晩御飯の準備をしていた。


 テレーザさんは見た目に反して超大食いだから晩御飯にはとりあえず特盛りのおかずをいろいろ出しておいた。


「レイくんがいると美味しい食事がいっぱい食べられて嬉しいです! 師匠と修行した時なんて食べるものがほとんど無くて地獄の様な日々でしたよ……」


「テレーザさんが使う古武術の師匠? どんな人だったの?」


 そう言えばテレーザさんからはそう言う話をあまり聞いたことが無かったかもしれないなと思ったので、師匠がどんな人だったのか気になった。


「はい、自称仙人を名乗っている人で、武術に人生の全てを捧げたみたいな人で、凄い強い人でした」


「自称仙人って……ちょっと可哀想じゃない?」


「本人がそう言っていたので……まだ仙人にはなれていないから自称はとれないと話していました。私からしたら人族なのに600年近く生きている師匠は既に仙人の域に達していると思うんですけどね……それに師匠は【魔素】さえ取り込めば食事もいらないらしいんですよ」


「うわっ……それはガチの仙人じゃん……しかも食事しなくて良いなんて……あれ?」


 人族ってそんなに生きられるのかなって思ったところで、あることに気がついた。


「どうしたんですか?」


「その師匠って【魔眼使い】じゃない?」


 テレーザさんの師匠が【魔導】に近い事が出来る人ならば、もしかして不老になっているんじゃないのかなと思った。


「【魔眼】持ちかは分からないですね……常に眼を閉じていましたし……」


「髪の色は?」


「白というか半透明ですかね。光の反射次第でいろいろな色に見えていたのではっきりしないですけどね」


「なるほどね……僕も一度あって見たいね」


 テレーザさんの師匠が【魔眼使い】かは分からないけど、少なくともエターナル先生と同系列の人なのが分かった。


 やっぱり長生きするんだな……


「イーストエンド地方に戻れたら紹介しましょうか? 多分、山籠もりしていると思いますけど……でも私は会いたくないかもです、何度も死にかけましたからね……」


 テレーザさんは師匠に会うことを考えたからなのか、露骨に嫌そうな顔をしていた……


「うん、やっぱり会うのは止めようかな」


 テレーザさんがここまで嫌がるって相当にヤバイ人なんだろうな……


 そして、紹介してもらったら自分も鍛えられてしまう未来が見える気がしたので、会わない方が良いなと思った。


「その方が良いかもしれないです」


「さてと……そろそろ寝る?」


 外はすっかり暗くなっているから、そろそろ寝る時間かな……


「あっ……」


「どうしたの?」


 テレーザさんが急に顔を赤くして俯いてしまった。


「すいません、レイくんと一緒に寝ると思ったら緊張してしまって……」


「ああ、そしたら僕は外で寝るよ。手作りの寝袋は割と快適だから外でも平気なんだよ」


「いえ、一緒で大丈夫です! レイくんを外で寝かすわけにはいきません!」


「えっ、いや僕はどこでも寝れるから平気だよ?」


 前世ではイスを並べてねたり、ダンボールの上で寝たりもしたから寝袋があればどこでも寝れるのだ。


「レイくんが外で寝るなら私も外で寝ます!」


「いや、それは……分かったよ。だけど布団はテレーザさんが使ってね? 僕は寝袋で寝るから」


「分かりました!」


 警戒用の【魔導具】を設置したあと、自分達は寝るのだった。


 こうして見知らぬ土地での1日目が終わるのだった。

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