第360話 ペンザエモンの葛藤

【ペンザエモン視点】


 我が輩とフレイザード様はレイ殿とレイ殿の知り合いと思われる少女が突然発生した高密度の魔力溜まりに触れて消えてしまい、消えてしまう事態に呆然としてしまったでござる。


 あの魔力溜まりは何だったでござるか?


 いや、あれは遙か昔に見た記憶があるでござるな……


「おい! 貴様ら、テレーザとレイがどうなったのか説明してもらうぞ!」


 っ!?


 奇抜な鎧を着たドワーフ族の女性が怒りながら我が輩達の方に近寄って来るのを見て、我が輩は我に返る。


 ドワーフ族の女性が話す内容からして、レイ殿の知り合いなのは分かるでござるが、我が輩やフレイザード様の正体が一般人に知られるのはまずいでござる!


 それに話をはぐらかしたらすぐにでも斬りかかってきそうな気配でござる……


『フレイザード様、ここは一旦逃げるでござる!』


『ああ、分かっているのじゃ。ジェーンは我が連れていくから、後は任せたのじゃ』


『御意』


 我が輩は瞬時に【魔装】を展開し、範囲内の生物全てに幻覚を見せる【白銀二刀流・四十三乃剣・夢幻帰牢】を発動させる。


 この剣技は強者か【魔眼】かそれに近い眼を持った者にしか防ぐことの出来ないもので、目の前の女性は我が輩が忽然と消えてしまった様に見えている筈でござる。


 そして、フレイザード様とジェーン殿が完全に離脱したのを確認後、追跡されないように痕跡を消してから立ち去る事にした。


 それからすぐに【魔眼協会】へと向かい、フレイザード様と今後の事についての話し合いをする事になった。


「ペンザエモン、レイくんについてなのじゃが……まずあの現象は分かるか?」


「いくつか不可解な点はあるが、似たような現象は見たことがあるでござる」


「流石はペンザエモンじゃな……それであれは何なのじゃ?」


「あれは遙か昔に見た【転移】前に発生する高密度の魔力溜まり……【ゲート】と呼ばれるものに酷似していた様に思うでござる……レイ殿は【魔導眼】の適性があると仮定すれば納得出来るでござるが……しかし、一緒に少女も飛ばされた事の説明が出来ないでござる……」


「【転移】……ワシは見たことが無いから分からないのじゃが……その少女はレイくんと手を繋いでいたから一緒に何処かへ飛んだのではなのか?」


「それだけでは無理なはずでござるが……我が輩も詳細は分からないでござるから、もしかしたら例外もあるのかも……」


 【転移】とは【魔眼】の祖である【魔導王】とその眷属にしか使いこなせない【魔導】で、そもそも生命体は完全適性した【魔眼】保有者か、専用の【魔導具】を持っている者しか【ゲート】に入ることすら出来ないと聞いた気がするでござる……


「そうなのか……あの少女が【魔眼】使いではないのは、見たらすぐに分かったのじゃ……それでは【転移】に近いスキルじゃないのか? 例えばジェーンの【移動】とかとレイくんのスキルが変に作用したとかあるかもしれないのじゃ、もしくはレイくんが既に【転移】を使えた可能性じゃ」


 我が輩はレイ殿がまだ【転移】を使えるレベルに達していないと思っていたのでござるが、しかし……


「レイ殿は予想外の事をするでござるから、無いとも言えないでござるな……」


「それで、仮に【転移】としたらレイくんはどこに飛んだのじゃ……?」


「レイ殿に渡しておいた探索受信機が反応しないでござるから、壊れていなければ少なくとも【イーストエンド】にはいないと思うでござる……」


 レイ殿にはいざという時に我が輩が駆けつけられる為に、探索受信機と呼ばれる【魔導具】を渡しており、範囲はかなりの広範囲だった筈でござる。


「【イーストエンド】以外……【転移】で移動可能な範囲はどれくらいなのじゃ?」


「条件さえ整えば距離は関係無い筈でござる……」


「そんな遠くに飛ばされたとしたら我々では探しようか無いのじゃ……セシリアさんに聞いてみたら分かるかもしれないのじゃ」


「そうでござるな、我が輩はセシリア殿と話した後レイ殿を探す旅に出たいでござる」


「そうして欲しいところじゃが……今ペンザエモンにここを抜けられると……」


「そうでござるな……」


 我が輩はすぐにでもレイ殿を探しに行きたいでござるが、【スカウトフォート】にいる【魔眼使い】は若者ばかりで、我が輩が抜けた場合はフレイザード様位しか対処が出来なくなってしまうでござる、それで仮にフレイザード様に何かあれば……

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