第358話 初戦闘

 自分とテレーザさんは歩きながら戦闘時にどうするかを話していた。


 テレーザさんの戦闘方法は多少聞いたけど、ブラットみたいなパワータイプみたいだけど、ブラットとは戦闘スタイルがかなり違う前衛といった感想だった。


 そして僕の戦い方は敵によって大きく変わるけど、基本的には【魔導球】を多数ばら撒き【魔導壁】や【魔導剣】、【魔導弾】を使い牽制や雑魚処理を中心とした遠距離支援タイプでいこうと思っていた。


 戦力だけで言えば【オルタナティブアーマー】を装備した力技が一番強いかもしれないけど、連携って意味では最悪なので、最終手段以外では【オルタナティブアーマー】を使うつもりは無かった。


「あと、レイくんに伝えておかないといけないのが、もしかしたらウエストエンド地方の魔獣はイーストエンド地方の魔獣よりも同じ種族でも強いかもしれないんです」


 ん?


「それって例えば魔犬がいたとしてもイーストエンド地方によくいる魔犬よりも強いって事?」


 犬と言ってもいろんな種類がいるのと同じで魔犬にも種類がいっぱいいて、強いタイプの魔犬が生息しているのかな……?


「そういう訳ではないみたいなのですか、ウエストエンド地方冒険記という本にイーストエンド地方の私にはウエストエンド地方では生きるのが大変だと書いてあったのを思い出しました」


「生きるのが大変?」


 何となく違和感のある表現だな……


「ウエストエンド地方の事をもっとしっかりと勉強していれば良かったのですが、すいません」


「いやいや、テレーザさんがいてくれて助かったよ。テレーザさんがいなければ、僕は未だに【スカウトフォート】の周辺だと思って歩いていたと思うよ」


 実際、【天空城】は大半が雲に覆われているので、意識しないと城が浮いているなんて思わないだろう。テレーザさんはそう言う周りを冷静に判断する力が子供でありながら備わっているのは凄いなと思う。


 それ以外でもひとりで飛ばされるのとふたりで飛ばされるのでは、テレーザさんには巻き込んで申し訳ないけど、安心感が全然違っていた。


「レイくんにそう言ってもらえるのは嬉しいです」


 自分は試しに【魔導球】を展開してみると予想外の事が起こった……


「あれ?」


「レイくん、どうしたのですか?」


「うまく【魔力操作】が出来ない……?」


 どんな状況でも今までなら【魔導操作】を失敗する事など無かったのだけど、上手く【魔導操作】が出来ず【魔導球】の起動に失敗してしまう。


「飛ばされた影響でレイくんの調子が悪いのですか?」


「いや、僕の調子は悪くない気がするんだけど……ん? もしかして大気中の【魔素】濃度が全く違う?」


【魔眼】でよく観察してみると、イーストエンド地方よりも大気中に混在している【魔素】の量が数倍……いや、数十倍はあるかもしれない。


 距離は離れているけど、同じ大陸なのにこんなに環境が違うなんてあるのか?


「確かに【魔素】が濃いですね……」


 テレーザさんも【天翔眼】で大気を確認していた。


「こんな事ってあり得るのかな?」


「そうですね……ウエストエンド地方に来たのは初めてなのではっきりとは言えませんが、これが先ほどの生きずらい環境なのではないでしょうか?」


「ああ、例の冒険記か……なるほど、確かにこれは慣れないと冒険に支障をきたしそうだね」


 いくつかスキルを試してみたけど、【魔素】が多いという事はそれだけ【魔導操作】の難易度が上がり、意識しないと威力が数倍になる代わりにスキルが暴発したり威力が大幅に下がってしまうリスクが跳ね上がる事に繋がっていた。

 通常はスキルを取得するには、そのスキルを問題なく使えるだけの【魔力操作】などがあることが最適条件なので、スキルを取得している人がスキルを暴発してしまうなんて事はないので、いきなりこんな環境放り投げられたら苦戦してしまうだろう。

 流石に自分がスキルを暴発してしまう事はないけど、精密な操作を求めるならいつもより長い時間【魔導操作】をしなくてはいけなかった。

 そして、一番に大変なのが【魔導球】みたいな【魔導具】はほとんどが無調整だと起動しなかった。


「テレーザさんは大丈夫そう?」


「微妙かもしれないですね……体術は関しては問題ないのですが、【天翔翼】は【魔力操作】の影響を受けてしまうので慣れるまでは不安ですね」


「僕も似たような感じだから少し【魔力操作】の練習してから探索を始めようか」


「そうですね」


 そんな感じで自分達はまず【魔力操作】の練習をする事にしたのだが、思っていた以上に慣れるのが早くてビックリした。


「これって【魔力操作】に慣れたというより身体が高濃度の【魔素】に慣れたって感じかな?」


「それは私も感じました。最初は身体が重くて違和感がありましたけど、今では逆に身体が軽く感じる位に慣れてきたかもしれないです」


「同じ大陸なのに地域でここまで差があるのにはビックリしたね。だからイーストエンドからウエストエンドへ来るとか、他から移動してきたって人は少ないのかな?」


「国家間の移動は手続きが大変で、余程の事がない限りは、ほとんどの人が移動しようとは思わないと聞いたことがあります」


「ああ、そういう理由もあるのか……」


自分達は【魔素】に慣れたので、草原を進むことにした。


そして、しばらく歩いたところで【魔導球】による探索に魔獣が引っかかった。


「テレーザさん、魔獣を3匹だけど発見したよ、形状からして……魔犬かな?」


 形状がイーストエンド地方の魔犬とは若干異なり、狩猟犬の様な身体をしていたので、テレーザさんの言うように同じ魔犬でもイーストエンドとは違い、こっちの方が強いのかもしれない。


 というか、魔犬が別の進化をしたと考えた良いかもしれないのかな?


「まだよく見えないですが……ああ、あれですね。この距離だと向こうも気がついているか分かりませんが、戦いますか?」


 テレーザさんはたぶんスルーすれば戦う必要は無いけど、戦いますか?って聞いているんだろう。


「魔犬ならば倒せると思うからどれくらいの強さなのかチャレンジしてみよう。勝てそうに無ければ後退してもらって良いかな? 周辺を巻き込んだ戦いをすれば負ける事は無いだろうからさ」


「分かりました、出来れば1匹づつ戦えたら助かるんですけど、大丈夫ですか?」


「うん、やってみるよ」


 2匹の魔犬には【魔導壁】などで進行方向を塞いでやれば、大丈夫じゃないかなと思う。


 自分達は少し魔犬の方へ近寄ると、魔犬もこちらに気がついたらしくて3匹が一斉に走ってきたのだが、自分は魔犬2匹の進行方向に何枚もの【魔導壁】を多重展開をして足止めするのに成功していた。


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