第357話 セシリアとの同期

 自分とテレーザさんは見知らぬ草原に放り出された感じになったのだが、これからどうしようか話し合っていた。


「まず街を探すにしても現在地も地図も無い平原だけど、どうしようか? 適当に真っ直ぐ歩いてみる?」


「それで良いと思います。道を発見出来ればその時に考えましょう! 問題は食料とか寝るところですかね? 突然の出来事でしたのでお金もそうですが食料に関しては一切ありませんし、野営をする道具もありませんから……」


「それは大丈夫かな」


「えっ?」


「食料は僕のスキルで何とかなるし……寝るところは」


 自分ひとりで寝るだけなら【魔導工房】内で……って草原に扉だけあるのは不自然過ぎるし、仮に扉が壊れたらどうなるのかな?


 そう言えばピクニックの時に作ったログハウスがあったのを思い出し、【ストレージ】からログハウスを取り出してみる。


「テレーザさん、こんな感じのログハウスならあるけど、街に着くまでここに寝るので大丈夫?」


「……レイくんが【アイテムボックス】の【魔法具】を持っているのは知っていましたけど、こんなに大きなものまで入るものを持っていたとは予想外でした……」


 テレーザさんはログハウスを見て、びっくりしてしまったけど、そう言えばテレーザさんには織機をしまった位しか見せていないのを思い出した。


 これからテレーザさんと一緒に【スカウトフォート】を目指すならある程度のスキルなどは教えないとダメかもしれないな……


「えっとね、僕のは【魔法具】の【アイテムボックス】ではなくて、スキルの【ストレージ】ってやつでね、ほとんど制限が無いやつなんだよ。ただし、他人には偽装の為に【魔法具】から出している感じにしているけどね」


「えっ……制限無し? そんな規格外のスキルは聞いたこと無いですよ……確かにそんなに破格なスキルならば隠した方が良いかもしれないですね」


「うん、だから内緒ね?」


 そう言いながら、自分はログハウスを【ストレージ】にしまう。


「分かりました! あとの心配は【スカウトフォート】の皆さんに私達の無事を知らせられない事ですね……数日で帰れるなら問題無いですけど、間違いなく数ヶ月はかかるでしょうから、たぶん死んだ事になっているでしょうね……」


「ああ、それも一応は大丈夫だと思うよ。僕が死んでいないって事はセシリアに伝わっている筈だから、一緒にいたテレーザさんも無事だと考えるんじゃないかな?」


 実はさっきからセシリアに【魔素通話】をしようと呼びかけているが、全く反応が無かったが、自分が無事かどうかだけならセシリアとの【同期】により、自分にセシリアの体調が伝わっている、逆に自分の体調もセシリアには分かるだろうから、怪我すら無いことも伝わっているだろう。


それにしても【魔素通話】は【魔素】がある限りは範囲は無制限だと思っていたけど、実は範囲制限があったのは予想外だったな……


セシリアとこんなに離れる事は無かったから勘違いしていたけど、こんな事なら緊急の連絡手段などを考えておけば良かったかな。


「セシリアさんはそんな事も分かるんですか? 信じられない情報ばかりでビックリしていますが……でもレイくんが言うのですから出来るんでしょうね。一応、私達の無事がみんなに伝わるならひとまずは安心です、あとは無事に帰らないといけないですから、あまり急ぎすぎない様に慎重にいったほうが良いかもしれないですね」


「うん、そうだね。僕も知らない土地では慎重に進むのは賛成だよ、ゆっくりになるかもだけど仕方ないよね」


「私とレイくんは学生にしたら強いと思いますけど、カーラさんやマギリさんほどの強さは無いので慎重位がちょうど良いと思います」


「とは言っても2年以内には帰りたいな」


「私の予想では3ヶ月から半年くらいでは帰れると思いますから、大丈夫だと思いますよ」


 【魔眼協会】のジェーンさんを除く子供達は、あと3年位は【魔眼】が暴発しないと言っていたけど、最低でもその前には帰りたいなと考えていた。

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