第350話 吸魔の呪面 ③

 自分は数日ぶりに【魔眼協会】に来ていた。


 【スカウトフォート】に【聖教会】の【魔王】や【聖人】が来ていたので、念のために【魔眼協会】では人の出入りを必要最低限にしていたので、自分は近寄るのを控えていた。


 しかし、既に【魔王】や【聖人】は【スカウトフォート】から出て行った情報が入っていたので、出入りは解禁されていた。


「フレイザードさん、【吸魔の呪面】はどうでした?」


「時間をもらっておいて悪いのじゃが……結局、分からなかったのじゃ」


「分からない? 実際につけないと分からないって事ですか?」


 装着して初めて効果が発揮するタイプだろうから、実際につけないとダメなのかもしれないな。


「いや、試すための人体を模した【魔導具】があるのじゃが、この【吸魔の呪面】を装着させても効果が発動しなかったのじゃ。レイくんの【鑑定】で表示されている効果は確実に発動するはずなのに、無反応だったから呪いのリスクなど検証は一切出来ていない状況じゃ……もしかしたら、最初に【魔導】を流すのはレイくんじゃないと駄目なのかもしれないのじゃ」


「じゃあ、試してますよ」


それから自分はフレイザードさんの指示通りに人体模型みたいな【魔導具】に【吸魔の呪面】を取り付けたあと、自分の【魔導】を流し込む。


「おお、やっぱりレイくんの【魔導】に反応するみたいじゃな……しかし、効果は確認出来ないのじゃ」


「そしたら勿体ないけど、破棄ですか?」


 勿体ない気もするけど、リスクが分からないのでは流石に子供達に試すのは駄目だろう……


 見方によっては人体実験みたいなものだしな。


「破棄はしないぞ、この【吸魔の呪面】はジェーンが使うのが決定しているのじゃ。ただ、確実なリスクが保証出来ないのが残念じゃが……」


「えっ、大丈夫なんですか? もしも何かあったら……」


「それはジェーンにも説明済みじゃ、何もしなければ余命1ヶ月位で本人もチャレンジすると言っていたのじゃ」


「それならせめて1ヶ月だけでも待ってくれませんか? 今、新素材を開発中なんで、1ヶ月あれば別の【魔導具】も作れるかもしれないんです」


 1ヶ月間、蜘蛛糸で作った【魔導具】が完成すれば【吸魔の呪面】より良いものが出来るかもしれない。


「それは無理じゃ……当初は3ヶ月位は猶予があったはずなのじゃが……既に右腕に痺れが出ているみたいだから、1ヶ月後に助かったとしても脳の大半がダメージを受けた状態までは改善されないから、チャレンジするなら今のタイミングがギリギリなのじゃ……」


「そんな状態なのか……数日前まで元気だったのに。」


「……多分じゃが、レイくんを心配させないように無理していたのじゃ。レイくんが【魔眼協会】に来た時点でジェーンは既に定期的な頭痛を感じていた筈なのじゃ。だからもしジェーンになにかあってもレイくんの責任は一切無いし、チャレンジする事が出来ただけでもジェーンは感謝していたのじゃ」


「そうなんですか。そしたら【吸魔の呪面】を試すのはいつなんですか?」


 せめてジェーンさんが【吸魔の呪面】によって、どのような結果になろうとも【魔導具】を作った責任として、装着する場面を見届けたいと思った。


「3日後の予定なのじゃが……レイくんに頼る形になってしまうのじゃ……」


「はい、僕が作った【魔導具】ですから見届けたいと思っています」


「そうか……しかしジェーンの【魔眼】である【消失】と【移動】はとてつもなく危険で強力じゃから、実際はどうなるか想像出来ないのじゃ、それでも来るかの?」


「はい」


 自分はジェーンさんが【吸魔の呪面】を使う場面を見届けることになった。

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