第348話 ふたりとの別れ

 マギリさんからコーデリアシンシアの事を聞いた次の日、自分でふたりに話があると言われ、ふたりの待っている学校の空き教室へ向かっていた。


 昨日、マギリさんから話を聞いていなければ何の話かな?と思っていただろうけど、話を聞いた後なので【魔王】や【聖人】関係なんだろうなと予想できた。


 ちなみに話があると言われた後、ふたりと一緒に空き教室に向かえば良かったのだけど、念のためいくつかの【魔導具】を装備してから、ふたりの元へ向かうことにした。


 何を懸念していたかというと、もしかしたら【聖教会】の人がいるんじゃないかな?と思ったのだ。


 今の自分は【認証の指輪】を無効化していたり、【魔眼協会】側のお手伝いをしたりと、【聖教会】からしたらあまり知られたくない事が多数あったので、【魔眼】を隠したり髪色の変更、【魔導】を抑えるものなどいろいろな【魔導具】をつけることにした。


 まあ、多分空き教室にはふたりしか居ないだろうと思うけど、念には念を入れていかなければいけなかった。


「はいるよ」


「はい、大丈夫ですよ」


 自分が部屋に入ると、予想通りでコーデリアとシンシアしか居なかったのだが……ふたりの表情が真剣な上にちょっと暗い印象を受けた。


「それで話したい話って何かな?」


 コーデリアは言いにくそうな感じがするが、意を決した表情になる。


「突然の話になるんですが、私とシンシアはレイが良ければ、【レイクハート】にある学校に転校しようと思うのですが……どうですか?」


「転校……? 【レイクハート】ってどこだっけ?」


 ちょっと自分が考えていた話と違ったため、戸惑いがあった。


「【レイクハート】は隣国にある大都市です」


「なるほど……隣国なのか、えっと理由を聞いても大丈夫かな?」


「将来、レイと共に冒険者として……いえ、パーティーメンバーとして実力をつけるために、【スカウトフォート】にいるよりも【レイクハート】にある学校で学んだ方が効率的だと考えたんです」


「私も、【レイクハート】にいる、人から、学ぶことが、良いみたい」


「そっかぁ……数年は離れてしまうと寂しいけど、ずっとの別れでは無いし、ふたりが後悔しないようにするなら、僕は反対しないよ」


 2人には自分でいうペンザエモンさんみたいな人が【レイクハート】に居るんだなと思ったので、特に反対する気は無かった。


 特にコーデリアの場合はスキルとかが自分みたいに特殊過ぎるから、独学に限界が来るのはよく分かる。


「ありがとうございます。必ずレイのパーティーメンバーとして活躍出来るようになって戻ってきます」


「私も、レイが、びっくりする、ほど、強くなる」


 ふたりは最初の暗い感じとは違い、やる気に満ちている目をしていた。


 うん、子供はやっぱり希望や夢があると良いなと思った。


「ちなみに転校はいつ頃? ふたりは同じ学校に行くの?」


「それが転校はすぐにでもと言われているので、レイが良いって言うなら明日にでも出発するつもりです。あと私とシンシアが【レイクハート】に誘われたのは別口なので、学校も住むところも違うんです」


「そう、私達は、別々の、寮が、あるみたい」


「明日? それはまた急だね……でも早く転校した方がクラスにとけ込めるし良いのかな? 僕はふたりが凄い活躍するのを楽しみにしているよ」


「ありがとうございます!」

「頑張る」


 こうして自分達のパーティーは完全に解散という形になり、コーデリアとシンシアは次の日に転校していった。


 自分はこの時、学校を卒業すればまたふたりと合流して、一緒に冒険を出来るのかなと思っていた……

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