第347話 魔王と聖人
蜘蛛達がぬいぐるみみたいになったその日の夜、みんなで晩御飯を食べていたらマギリさんの部下から不穏な連絡が入った。
「カーラ、耳に入れておかなければいけない情報が入って来ました」
マギリさんはいつも真面目だけど、今日は特に真剣な表情をしていた。
「なんだ? ここでは話せない内容なら移動するぞ」
カーラ先生も空気を察して別の部屋で報告を聞くかを訪ねる……これは今までとは違う雰囲気だけど、何があったのかな?
「いえ、テレーザ様やレイさんにも関係のある事ですから、ここで話しても問題は無いと思います」
自分やテレーザさんにも関係がある?
そうなってくると、あの話しか無いのかな?
「じゃあここで話せ」
「はい、まず【スカウトフォート】に【魔王】アミル様、【聖人】マリア様がお忍びで来ていました」
「それは私達は関係あるのか? 【魔王】様や【聖人】様が来るのは珍しいが、無い訳じゃない。それをわざわざ報告するのは……」
「【魔王】様が来た目的は分かりませんでしたが、【聖人】様の目的はコーデリアさんみたいなのです」
「えっ!?」
コーデリア?
「コーデリア? 何故、【聖人】様が……」
「詳細は分かりませんが、現在は両名とも帰られています。そして【聖人】様が接触したのは【マリア学園】を除けばコーデリアさんだけとの報告がありました」
「レイ、コーデリアから何か聞いているか?」
「いえ、何も聞いてないです。自分にも何がなんだか分からないです」
【聖人】様とコーデリアが何を話すんだろう?
「そうか……マギリ、コーデリアにはもう聞いたのか?」
「部下が聞いたところ、極秘らしくて聞けなかったと言っていました」
「そうか、ならこちらから聞くのは良くないな……」
「それともう一つ報告があります」
「まだあるのか?」
「先ほど話していた【魔王】様ですが、偶然みたいですがシンシアさんと接触し、その後に2人は【覚醒薬】を流していたグループのひとつを壊滅させました」
「……おい、レイ!」
「いや、それも僕も知らないです……」
コーデリアの次はシンシア?
「コーデリアの方も何で【聖人】様と会っているのかよく分からないが、シンシアの方は更に意味が分からないぞ……偶然に【魔王】様と出会って犯罪グループを壊滅させた?」
カーラ先生が言うのもよく分かる。
自分も意味が分からない……
「明日にでも僕の方から聞いてみますか?」
カーラ先生やマギリさんは聞きにくいだろうから自分が聞いた方が良いかなと思った。
まあ、最近は2人ともいろいろと悩んでいたから話しかけづらかったというのもあるけど……
「【聖人】が極秘だと言ったのなら、レイだとしても不用意に聞かない方がいいだろう。例え言いたくても、何があるか分からないからな……」
「なるほど、【認証の指輪】ですか」
【認証の指輪】は自分にはもう意味のない指輪になってしまったから、忘れがちだけど、確かに【認証の指輪】がある限りは【聖教会】の意にそぐわない事はしない方が良いだろうなと思った。
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