第346話 織機と蜘蛛達 ②

 自分はぬいぐるみっぽい姿が変わってしまった蜘蛛に【魔導】をゆっくりと流し込んでいた。


 【テイム】したアビスハート達に魔獣の肉や血、その他にもいろいろな餌を与えてみたけど、結局は自分が与える【魔導】が1番喜んでくれる事が分かっていたので、蜘蛛達にも同じ様に【魔導】を与えていた。


「しかし、蜘蛛ってこんな賢いものなのかな?」


「さあ……私も蜘蛛に考える知能があるだけでもびっくりしています」


 蜘蛛達は自分の【魔導】を効率的に貰うために考えたのか、蜘蛛達は自分の前に綺麗な列をつくって並んでおり、十分に【魔導】をもらった蜘蛛はぴょんぴょんと跳ねた後、列から外れるという知性しか感じない行動をとっていた。


 全ての蜘蛛達に【魔導】を与えたあと、足元にいる1匹の蜘蛛を手に取ってみるが、やはり表面の質感などがフワフワしたボア生地みたいだった……


 やっぱりぬいぐるみが動いてるんじゃないか?と思ったのだけど、ちょっと押してみるとぷにぷにとして気持ち良いな。


 テレーザさんも自分の行動を見て、同じ様に足元いた蜘蛛の1匹を両手で持ち上げたら軽く押して感触を確かめていた。


「レイくん! この子1匹くれませんか? 大切に育てますから……」


 蜘蛛を両腕で抱きしめながら、1匹欲しいとテレーザさんにお願いされる。


「いや、貸すかたちにはなるけど、僕は何匹でも持っていっても構わないんだけど、蜘蛛だよ? 見た目は可愛いけど、蜘蛛だよ?」


 確かに知らなければ蜘蛛のぬいぐるみにしか見えないが、中身は歴とした蜘蛛である。


 例えは違うかもしれないけど、羊の皮を被った狼みたいに見た目が可愛いだけである。


 女の子に蜘蛛を貸して上げるって、どんな状況だよっと思うけど……


「はい、それは大丈夫です! それにこれだけ賢ければ犬よりも優秀かもしれないです」


 あっ、なんかテレーザさんに抱きしめられている蜘蛛が嬉しそうなのが伝わってきた。


「それなら好きなのを持っていっても良いよ。ただし、餌は僕の【魔力】だから1日1回は連れてきて欲しいかな」


「ありがとうございます! 必ず連れてきます!」


 結局、テレーザさんは10匹もの蜘蛛達を部屋に連れて部屋に戻って行った。


 自分は心の中で、しっかりとテレーザさんの役にたってくれたら良いなと願ったら、蜘蛛達から分かった!って何故か言っている気がした……


「そう言えば、テレーザさんの部屋にも巻き糸の芯をいくつか渡しといて。もしかしたらテレーザさんの部屋に行った蜘蛛達も、巻き糸にしてくれるかもしれないからさ」


「分かりました、今日中に大量購入しておきます」


「うん、よろしくね。ああ、あと木材とクズ【魔石】、染め粉とかも頼んで良いかな? 巻き糸の芯以外は急いでないから数日以内でいいよ」


「いろいろ試されるんですね」


「せっかく大量な糸があるから片っ端から試してみようかなと思ってるよ。その中にひとつでもあの子供達の助けになる材料が作れたら良いんだけどね」


「マスターなら出来ると信じています」


「ありがとう」


 まずは手軽に出来るところから試してみようかな……

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