第343話 魔王との邂逅 ③
【シンシア視点になります】
私は【魔法具】屋に1人で来ていたのだけど、勢い良くお店に入ってきた怖い女の子と話すことになってしまった。
「わ、私は、【ハンタースクール】の、学生……です」
「へえ、冒険者育成の学生か、なら将来は冒険者になりたいのか?」
「は、はい、でも、冒険者に、なれるか、分からないです」
知らない人にいろいろ話したらダメだとコーデリアに言われているけど、なぜだかこの女の子の質問には強制的に答えさせられているかの様な凄みがあった。
「戦う、才能が、あるか、分からない、から」
「あ? ……お前に才能が無いのならほとんどの冒険者は無能になるぞ? それとも自分の実力すら分からないのか?」
「そ、そんな、才能は……」
女の子が言うような才能とはレイやエレナ、ブラットくんみたいな人の事を言うんであって、今の私はレイのおかげで多少は強くなれたけど、レイがいなかったらまともに簡単な【魔法】すら使えていなかったかもしれないので、少なくも私は……
「その自信の無さはなんだ……? 何の適正があるのか分からないな……ん? お前は【魔力】を抑える【魔法具】を使っていないか?」
「それは……」
レイに初めてもらった眼鏡は大切なものだから、あまり他人に教えるのは躊躇われた。
この眼鏡は【魔力認識のメガネ】の改良版で、【ハンタースクール】に入るタイミングでレイに眼鏡のピントがずれてきたと相談したら、ピントの直しプラスで【魔力暴走】を抑える効果が追加されちゃったと笑いながら言っていた。
私としては【魔力暴走】しない方が助かるから有り難かった。
「……その眼鏡か? まあ、別に取り上げたりしないから、そう警戒するな」
この女の子はそんな事も分かってしまうなんて、本当に何者なんだろう?
「あなたは、いったい……」
「ん? ああ、言ってなかったな。私はアミル、【魔王】アミルだ」
「えっ!? 【魔王】様?」
何でこんなところに【魔王】様が?
「ああ、その【魔王】だ。その眼鏡を外してみろ」
「分かり、ました」
私は言われた通りに眼鏡を外す、人前で眼鏡は外すのは久しぶりかも。
そしてアミル様は眼鏡を外した私をじっと見つめているみたいだった。
「何となく分かったから眼鏡をかけていいぞ」
私はアミル様の言われた通り眼鏡をかけたのだけど、アミル様はブツブツと独り言を言いながら考え始めた。
「系統は【傲慢】か……? ならタイミング的にはちょうど良いが……逆にタイミングが良すぎるか?」
「あ、あの……私はどうすれば?」
「ん? ああ、悪いな。私はあまり考えるのは苦手だから……回りくどい説明は面倒だから結論だけ言うと、私と一緒に【レイクハート】へ来れば今以上に強くなるなれるから前向きに検討しておいてくれ」
いきなり【レイクハート】?へ一緒に来いと言われてしまった……
レイとは離れたくないけど、今以上に強くなるって言われちゃうと、心が揺らいでいた。
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