第340話 聖女候補者 ④

【マリア視点】


 私は【精霊魔法】を使う女の子と会うべく、1人で待ち合わせのレストランに来ていた。


 アミルには舞演祭に行く前に【覚醒薬】と噂されている怪しげな薬が街中で出回っていると【聖教会】の職員から聞いたので、調査に行ってもらった。


 最初は凄く嫌がっていたけど、仕事だから仕方ないと言って走って出て行った。


 しばらく待っていると、約束の女の子はキョロキョロしながら部屋に入ってきた。


 女の子は話しに聞いていた通り、エルフ族の特長がある青い髪の子だった。


「良く来てくれたわね、気軽に座って頂戴」


「はい、でもこんな高級レストランに招待してもらうなんて……」


 それはそうよね、今私達がいるレストランは、一般人は入れない会員制の超高級レストランだから、貴族でもない限りはこのレストランには来れないわよね。


「気にしなくても良いわよ。このレストランは機密情報を守る意味もあって選んでるのよ」


「だから個室なんですね」


「ええ、そうよ。名前はコーデリアさんで合ってるわよね?」


「はい、コーデリアです。それで私は【マリア学園】に転校を薦められる為に呼ばれたんですか?」


「ちょっと違うけど、似たようなものかしら……とりあえず料理を食べてから話しましょうか」


「分かりました」


 ここのレストランに来るのは3回目だけど、結構美味しいのよね。


 値段が高過ぎるから、大食いのアミルは連れて来れないのは可哀想だけど、コーデリアさんも美味しい料理を食べたら少しは話がスムーズになるんじゃないかと思っていた。


「やっぱり美味しいわね……あら? コーデリアさんの口には合わないのかしら?」


 コーデリアさんの反応が普通ね……


 私の予想ではもっと喜ぶと思ったのだけど、あまり好きではなかったのかしら?


「いえ、とても美味しいです」


 コーデリアさんはニッコリと微笑んでいたけど、ちょっと苦手なものがあったのかもしれないわね。


「そう? それなら良かったのだけど……」


 それから出てきたコース料理は全て美味しかったのだけど、やっぱりコーデリアさんの表情は微笑んでいるだけで、あまり表情に変化は無かった。


「それで今日はコーデリアに提案したい話しがあって読んだのですが、最初にこの場で簡単な【精霊魔法】を見せてもらっても良いですか?」


 私はアミルの言うとおり戦闘能力はほとんど無いけれど、【魔力】を使用した時の揺らぎみたいなものは分かるので、コーデリアさんには何か【精霊魔法】を使ってもらうことにした。


 コーデリアさんは目をつぶり、しばらくするとテーブルの上にコーデリアさんの頭と同じ位の水で出来た球が浮かんでいた。


 これはほぼ確定かしら?


「コーデリアさん、ありがとうね。あなたの能力は分かりました。そこで提案なのですが、私と一緒に【レイクハート】に来ませんか?」


「……えっ? 【レイクハート】って隣国のですか?」


「ええ、その【レイクハート】であっているわよ。そこにはコーデリアさんの才能を引き出すための資料などがいくつもあるのよ」


 ほんの一瞬だけど、才能を引き出すってところで反応したわね。


 もしかしたら……


「コーデリアさんは今よりも強くなりたいのかしら?」


「……なんでそれを?」


「それは【精霊魔法】についての詳しい資料は【聖教会】でも私みたいな【聖人】クラスしか閲覧できないからよ。私と一緒に来ればその資料が見れるわよ」


 私はコーデリアさんを次期聖女候補として育てる手はずを頭の中で考えるのだった。

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