第339話 聖女候補者 ③
【マリア視点】
私とアミルは舞演祭の前日に【スカウトフォート】へ到着していた。
「なあ、マリア。一緒に何か食べに行こうぜ~」
「さっき、お昼を食べたばかりだから私は食べられませんよ! それにこれから【マリア学園】へ行かなくてはならないので、晩御飯は1人で食ベて下さい」
私は事前に【精霊魔法】の使い手と会う約束を現地の職員に取ってもらっているのだけど、どんな感じの子なのかを職員から聞いておいたいと思っていた。
出来れば【スカウトフォート】の【マリア学園】ではなく、私が拠点にしている【レイクハート】にある【マリア学園】へ転入して欲しいと思っていた。
「今から行くのか? なら、せっかくだし護衛してやるよ」
「え? 【マリア学園】へ行くだけですからひとりで平気ですよ」
「街中だからって不用心なんじゃないか? マリアはほとんど戦闘能力が無いんだから、街中で襲われたらどうするんだ?」
「でも……」
私はアミルの言っている事が正論過ぎて断る言葉がすぐに思いつかなかった……
「それとも私がついてくと不都合があるのか?」
「……わかりました。一緒に【マリア学園】へ行きましょう」
ここは折れるしか無いかなと思った。
それから私とアミルは【マリア学園】の視察を開始したのだけど、予想外の事でアミルとは別れる事になった。
「まさかセシリアショップがこの街にオープンするなんて私達はラッキーよね~」
「そうよね、私達だけでは【チェスガン】には行けなかったから、今から楽しみだよね」
「おい! 今、セシリアショップがオープンするって言ったか?」
【マリア学園】の生徒達がアミルの行きたいと言っていたカフェの事を話しているのを聞いてしまったので、食いついたのだ。
「え、誰ですか?」
「あ? 私の事を知らないのか?」
「アミル、あなたの事を知っている一般人はほとんどいないわよ」
「えっ!? ま、マリア様!?」
「ええ、私が【聖人】のマリアよ。それよりもさっきは話しは本当なのかしら?」
「セシリアショップの事ですか?」
「ええ、そのセシリアショップってカフェの事よ」
「いつオープンするかは分からないですけど、数ヶ月以内には【スカウトフォート】内でオープンするみたいです」
「それはどこにオープンするんだ? 誰から聞いたんだ?」
「えっと、最近になって知り合った人が言っていたんですけど、それ以上は分からないです」
「くっ……マリア!」
「ダメよ」
私にはアミルが何を言いたいかがすぐに分かったので、即答で断った。
「まだ何も言ってないだろ!」
「どうせオープンするまで【スカウトフォート】にいるって言いたいんでしょ? ここは拠点から離れすぎてるから長期滞在は許可できないわ」
「くそ……そしたらその知り合いを教えろ」
「えっ、【ハンタースクール】の生徒で、レイくんって名前しか分からないです」
「【ハンタースクール】か……確か冒険者育成の学校だったな。明日は……」
【ハンタースクール】って私が明日会う予定の生徒が通っている学校じゃないの……
「明日から舞演祭ですから【スカウトフォート】内の学校とかはほとんど休校になっていると思いますよ」
「舞演祭か……それが終わってから行くしかないか」
「アミル、ちなみに明後日には私達は帰らないといけないから、その【ハンタースクール】には行けないわよ」
「定例報告会か……」
アミルはもの凄くガッカリして、目に見えてやる気がなくなっていった。
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