第334話 蜘蛛のテイム ③

 テレーザさんと【天翔眼】の話をしたあと、1時間ほど蜘蛛の【テイム】をしていたら、何となく蜘蛛の内部構造がわかってきた。


 最初は小さい蜘蛛だから、脳にあたる部分もかなり小さいのかなと考えていたけど、それはどうも勘違いみたいで蜘蛛の脳にあたる部分は身体の大きさに対してかなり大きい事が【魔導】を流して分かってきた。


 そして、手応えを感じ始めてから数回【テイム】をチャレンジしたら、初めて蜘蛛の【テイム】に成功したのだった。


「やった! テレーザさん【テイム】に成功したよ!」


「レイくん、おめでとうございます! 【テイム】された生き物は初めて見ましたけど、今まで体内に【魔力】がほとんど無かった蜘蛛が、【テイム】されると全体がレイくんに似た【魔力】に上書きされる感じなんですね」


「そんな感じになるんだ?」


 テレーザさんの【天翔眼】は、自分の【魔眼】で分からない事を補ってくれる感じだから、どういう風に見えているかを教えてくれるのは、非常に助かるなと思った。


 その後は残りの蜘蛛も片っ端から【テイム】していき、30分程でセシリアの用意してくれた全ての蜘蛛の【テイム】に成功していた。


 一度、コツを掴めたらかなり楽に【テイム】が出来るけど、危険な魔獣とか襲いかかってくる生き物には【テイム】を使うのは難しいなと思った。


 最初のイメージだと、魔獣などを弱らせれば【テイム】が出来るのかなと思っていたけど、実際の【テイム】は洗脳に近いものだった。


「そう言えばレイくんは蜘蛛を【テイム】してなにをするんですか? こんなに小さい蜘蛛だと何が出来るのか想像出来ないんですが……」


「えっとね、蜘蛛の糸を使った生地を作ろうと思ってるんだよ」


「蜘蛛の糸でですか?」


 蜘蛛の糸だけ見たら生地になるなんて不思議に思うのは当然だと思うけど、前世では蜘蛛の糸を使って編んだ高強度な糸が作れるってニュースで見たことがあったので、是非試したいなと思ったのだ。


「うん、今はまだどうすれば良いか分からないけど、【テイム】した蜘蛛の糸を使った生地で服や【魔法具】が作れたら良いなと思ってるんだよ」


「レイくんの発想は凄いですね! 私には蜘蛛の糸で服を作るなんて想像出来ませんよ!」


「あはは……ありがとう」


 自分も前世の記憶が無ければ蜘蛛の糸を使おうなんて想像出来ないから、褒められるとちょっと罪悪感があるな……


 その後、【テイム】した蜘蛛達に意志があるのかは分からないけど、一応高強度の糸を作りたいから頑張って欲しいというイメージを蜘蛛達に送っておいた。


 まあ、蜘蛛達が勝手に巻き糸を作ってくれる事は無いだろうから、蜘蛛の巣から巻き糸を作る手段を考えないと駄目かなと思った。


 カサカサカサカサ……


 ん?


 巻き糸をどうしようかなと考えた直後に蜘蛛達の動きが活発になったぞ?


「いや、気のせいかな……」


「どうしたのですか?」


「いや、何でもないよ」


 マギリさんから、この部屋はずっと使っていても構わないと言われているので、蜘蛛達が好きに蜘蛛の巣をはれる様に放し飼いにして様子を見ることにした。


 あと蜘蛛達の餌もアビスハート達みたいに、自分の【魔導】を流せば良いのかな?



「あっ、セシリア。巻き糸に使う芯とかも用意しておいて貰っても良いかな?」


「分かりました。それでしたらすぐに用意出来ると思います」


「頼んだよ」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る