第331話 蜘蛛のテイム ②

 自分とテレーザさんは屋敷の物置に来ていた。


「レイくんはこれから何をするんですか?」


「あ、その前に聞かないといけない事があったんだ……」


「なんですか?」


「テレーザさんは蜘蛛とか大丈夫かな?」


「えっ、蜘蛛位は大丈夫ですよ。あまり巨大な人喰い蜘蛛とか酸を吐き出す蜘蛛は苦手ですけど……」


「いや、それなら大丈夫かな」


 巨大な人喰い蜘蛛とか酸を出す蜘蛛なんて、自分も逃げ出すレベルで怖いよ……


 コーデリアやシンシアとかの反応ばかり見ていると、やはりほとんどの女子は蜘蛛などの虫類が苦手なのかなと思ったけど、テレーザさんの感じだと蜘蛛は大丈夫っぽいからちょっと安心かな。


 まあでも、大丈夫ってだけで、好きという訳ではないから大量の蜘蛛を見たらどうなるかという不安は若干あるけど、仕方ないかな。


 自分とテレーザさんが屋敷の裏側に向かうと、二階建て一軒家レベルの大きな建物だけがあった。


「あれ? 物置は?」


「レイくん、あの小さな建物が物置じゃないですか?」


 テレーザさんの指差す小さな建物とはもちろん自分が一軒家レベルと言った建物なのだが……あれが物置?


「あんなデカい物置なんてある?」


「そうですか? カーラさんは服などの種類が少ない上に独身ですから、この位のサイズは普通位ですよ。私の実家ではカーラさんの屋敷位のサイズがありますからね」


「流石は貴族って事か……」


 そう言えばセシリアショップの敷地もカーラ先生から無償提供されてる位だからな。


 物置と呼ばれている建物に入ると、そこはいくつもの部屋に分かれていてセシリアの案内で蜘蛛を保管している場所まで案内してもらう。


「部屋の中もまあまあ広いね」


 部屋の中に入ると片側の壁一面に布が被せてあるケースが綺麗に並べられていた。


 あれが蜘蛛を保管しているガラスケースか……


「テレーザさん、驚かないでね……」


 自分は思い切ってガラスケースにかけてある布をはぎ取ると、ガラスケース内には小さな蜘蛛が大量に動いていた。


「なるほど、それでレイくんは私に蜘蛛は大丈夫か聞いたんですね」


「うん、大丈夫? コーデリアやシンシアなら気絶レベルの光景なんだけど」


「私はこれくらいなら問題無いですよ。師匠との修行場所は岩山などでしたから、蜘蛛みたいな生き物には慣れてますからね。襲ってこない生き物はほとんど大丈夫です」


「へ~、それは凄いね」


「それでレイくんは蜘蛛で何をするんですか? もしかして蜘蛛の飼育が趣味とか?」


「うーんとね、僕は最近になって【テイム】が出来る様になったんだけど、今日は蜘蛛を【テイム】出来るかの実験なんだよ」


「【テイム】? レイくんの職種は【魔法剣士】じゃなかったですか?」


「まあ、そうなんだけど……いろいろ説明出来ないところはあるんだけど、【テイム】とかいろいろ出来ちゃうんだよ」


「……やっぱりレイくんは凄いですね。でもこの事は誰にも言わない方が良いですよ? 私は知ってしまったので仕方ないですが、【魔法剣士】が【テイム】を出来るなんて噂になったら、【聖教会】が調べに来てしまうかもしれないですよ」


「それはちょっと困るかな……」


 今は【魔眼協会】の件もあるから、なるべく【聖教会】とは関わりになりたくないなと思っていた。


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