第330話 蜘蛛のテイム

 自分は舞演祭の2日目が終わった後は途中で合流したセシリアにペンザエモンさんへの報告を任せて、テレーザさんと一緒に帰る事にした。


 昨日みたいにテレーザさんと別れて、自分が【魔眼協会】へ行っても良かったのだけど、テレーザさんが【魔王】を見てから調子が悪そうな感じだったので、流石にひとりで帰すのは良くないなと思ったのだ。


「大丈夫、テレーザさん」


「はい、すいません、折角のお祭りが私のせいで……」


「いや、そんな事は気にしなくて良いよ。テレーザさんと一緒に舞演祭を回れて楽しかったよ」


「そうですか? それなら良かったです」


「テレーザさんが調子悪くなったのは、やっぱり【魔王】様を見てから?」


「はい、私もまだまだ修行不足みたいで、【天翔眼】で【魔王】様の底知れない強さに恐怖してしまいました……」


「やっぱりそんなに強いんだ……」


「はい……私が戦ったとしたらきっと一撃すら防げないと思えるほどに強いですね……多分見た目からしてあの【魔王】様は【暴食】のアミル様だと思います。アミル様は【魔王】の中でも最強クラスだと師匠が言っていました」


 やっぱりアミル様か……フレイザード様やペンザエモンさんが言っていた様な強さなんだろうな……



 ☆


「ペンザエモンさんからは【魔王】と【聖人】が【スカウトフォート】に滞在中は【魔眼協会】へは念のために来ない方が良いと言われました。ペンザエモンさんの方でも【聖人】がこのタイミングでこちらに来た理由が分からないらしいので最大限の警戒態勢をとるそうです」


 自分は部屋でセシリアからペンザエモンさんからの話しを聞いていた。


「そっか、分かったよ。そしたら次に【魔眼協会】へ行けるときには子供達の【魔眼】問題を解決出来る様な【魔導具】を頑張って作らないとね」


「そうですね、それで購入してきた蜘蛛はどうなさいますか?」


「ああ、流石に部屋内で蜘蛛を解き放つのは怖いな……」


「蜘蛛は10匹単位でガラスケースに入ってます。それが36セットありますからガラスケースが壊れない限りは大丈夫だと思います」


「それは今どこにあるの?」


「屋敷の物置に置かせてもらっています」


「ならマギリさんの許可をもらって物置内で【テイム】の練習をしようか」


「わかりました」


 セシリアの話す感じたとガラスケース自体は50cm四方位の大きさだろうけど、それが36セットとなるとかなりの量になるだろうから、部屋に持ち込むよりは自分が物置に行った方が良いだろう。


「物置で作業ですか? それは構いませんが爆発や火災には気を付けて下さいね……」


「ああ、それは大丈夫です。危ない事にはならないので」


「レイくん! 私もその作業って見ても良いですか?」


 マギリさんの部屋前で話しをしていたら近くを通りかかったテレーザさんが興味深々な眼で話に参加してきた。


 どうしようかな?


 でも自分が【テイム】スキルを使える事は、どうせニャルルさんにもバレてるから良いかな?


「そしたら僕のスキルに関わるものだから、秘密を絶対に守ってもらえるなら良いよ」


「はい! 大丈夫です、私は殺されても絶対にレイくんの秘密を漏らしません!」


「いや、死んだらダメだよ……?」


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