第324話 舞演祭 ⑨

 舞演祭の1日目はテレーザさんと飲み食いしながら踊りを見ていたのだけど、片っ端から食べていくスタイルだと結局は屋台の半分くらいしか回れずに終わってしまった。


「全制覇したかったんですけど……残念です」


「今更だけど、胃は大丈夫?」


 屋台の半分と言っても30店近くあった商品を全種類を3人前ずつ食べていたので、最低でも270人前は食べていると思うんだけど……


「まだまだ大丈夫ですが……食べ過ぎる女子は嫌いでしたか?」


「いや、単純にびっくりしただけで良いたべっぷりで良かったよ」


 物理的に270人前の料理を食べれば、お腹がはちきれそうな気がするのだが、テレーザさんのお腹は朝の時から変わらず、ほっそりとしていた。


 しかも水分もかなり飲んでいた気がするんだけど……どこへ消えたんだ?


「そうですか? 引かれないか心配だったんで、ちょっと安心しました……」


「さてと、今日はちょっと寄りたいところがあるんで、ここで一旦解散で良いかな?」


 結局、今日は【魔眼協会】の子供達がやっている屋台をはじめとする見かけなかったから、帰りに【魔眼協会】に寄ろうと思っていた。


「分かりました、それではまた夜に!」


「うん、今日は楽しかったよ」


 自分はテレーザさんと別れてから【魔眼協会】へと向かった。


「あれ? 何でフレイザードさんとペンザエモンさんがここにいるんですか?」


 ジェーンさん達に会うため、住居エリアへ来たのだけど子供達の他に数人の若者とフレイザードさんとペンザエモンさんが来ていた。


「おお、レイくんか。ちょっとトラブルになりそうだと相談されたのでな……ワシ等も来たのじゃ」


「トラブル? 料理の味が悪かったですか? もしくは生焼けだったとか?」


 仕込みの段階では味は良かった筈だけど……冷蔵の技術が発展していないこの世界では、食材が半日で悪くなった可能性は否定できない気はする。


 もしくは肉の焼き加減か……?


「……いや、逆じゃよ」


「逆?」


 自分がよく分からないという顔をしていると、ペンザエモンさんがフレイザードさんの補足説明をしてくれた。


「今日、子供達が屋台を始めてからすぐに行列が出来たみたいで、大人気だったから良かったのじゃが、舞演祭の中に何故か【魔王】アミルがいたらしいので今日の屋台は売り切れにして撤収させたでござる。それで今回の舞演祭を参加中止にするか迷っていたでござる」


「えっ? 何で【魔王】がいたら参加中止になるんですか?」


「レイ殿は【魔王】アミルを知らないでござるか?」


「はい、あまりよく知らないです」


「【魔王】アミルは、大罪スキル【暴食】を持っていて無限に食べ続ける事が出来て、美味しいものが大好きな【魔王】でござる」


「えっ? そのスキルは役に立つんですか? それよりも【魔王】と屋台の中止は……」


 無限に食べまくるっテレーザさんみたいな【魔王】だなと思った。


「【魔王】に目を付けられたら、間違いなく屋台に数人の【魔眼使い】が集まっているのが発覚して、【スカウトフォート】にある【魔眼協会】の存在がバレるとやっかいでござる」


「あっ、そうか……」


【魔王】なら【魔眼使い】とかも見たら分かってしまうのか。


 今の自分は見た目だけなら【魔眼使い】って分からないから良いけど、人前で【魔導】を使うのは控えた方が良いのかな?




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