第320話 舞演祭 ⑤

 舞演祭の前日に屋台の仕込みを全て終わらせて、【アイテムボックス】に入れた状態で【魔眼協会】に来ていた。


 当日は焼いたり、盛りつけるだけにしてあるので多分自分が現地にいなくても大丈夫だろう。


「レイさん、仕込みを全部やってもらっちゃってすいません」


「大丈夫だよ、僕がみんなのお手伝いをしたかったんだよ」


 ジェーンさんは申しわけなさそうにしながら当日に使う屋台の骨組みを仮組していた。


 屋台を見ていると随分とねんきの入ったものだなと思った……それに木材で出来ているので火を使う屋台にしては危ないな。


「結構弱ってるけど、いつから使ってるの?」


「私はちょっと分からないですけど、私が参加した3年前から同じ屋台を使ってますね」


「僕が補修しても良いかな?」


 よく見たら木材部分も表面がトゲトゲしていてジェーンさんが怪我をするのではないかと思ったのだ。


「えっ、補修? 誰もダメとは言わないと思いますけど……」


「じゃあ、ちょっと補修させてもらうよ」


 自分は骨組みを持って【鑑定】をしてみるが、予想通りかなり木材は劣化していた。


 うーん、これなら新品に変えた方が良さそうだな……


 自分は手早く腐りかけていた木材と【アイテムボックス】内にあった木材を手早く交換して、接着剤を使い【神紙】を綺麗に張り付けていく。


 最近、【神紙】を多用しているが、耐火性能や耐水性能などがあるのでかなり便利な上にコストも安いと、まさに神素材だったりする。


【神紙】を木材に張り付けたり、接合部を加工すること数分、既に骨組みの原型は無くなったが丈夫になったので良しとしよう……


 ジェーンさんは完成した新しい屋台に触ってみて、口元が微妙な感じになっていた。


「レイさん……これは補修じゃなくて……」


「あれ? 触ってわかる?」


「明らかに違うんでそれは分かりますよ……でも、ありがとうございます。私たちが怪我などをしないようにと心配してくれたんですね」


「まあ、ちょっと凝り性なだけだよ」


「ふふ、レイさんがいれば舞演祭の屋台は成功しそうですね」


「僕は成功して欲しいと思ってるよ、料理に関してはかなり自信があるけど、こればかりはお客さん次第ってのもあるから分からないね」


「多分、今回の舞演祭が最後だと思うんで是非成功して欲しいんですよ」


「最後……?」


 ジェーンさんはまだ3年は大丈夫なんじゃないのか?


「はい、私の【魔眼】は【消失】と【移動】というフレイザード様曰わく、規格外の能力なんですけど、そろそろ【消失】の【魔眼】が限界な気がするんです」


 実際にどんな効果かは分からないけど、名前からして【消失】とか【移動】はチート級な能力な気がする。


 そう考えると、むしろよく今まで無事だったなと思ってしまうほどだ。


「それじゃあ、リスクがあっても【魔眼】を無くしたいと思う?」


「フレイザード様から【魔眼】を取ることは出来ないって聞きましたけど、もし【魔眼】が無くなる方法があるのなら何でも試したいです、たとえそれで死んだとしても……」


「そっか……」


 やはりリスクがあっても試したいか……


 そしたら、今日の夜も【吸魔の呪面】を作るかな。


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