第312話 舞演祭 ②

 自分はペンザエモンさんに連れられて、普段は来ることの無い【魔眼協会】の居住エリアに来ていた。


 この居住エリア内は地上なんじゃないかと錯覚してしまう程に明るさがあった。


 壁一面にコンクリート作りの建物がびっしりと建っており、その周りには草木が至る所に生えていた。


「地下なのに草木が生えてるんですか?」


「居住エリアの天井にのみ特殊な【魔導具】を使用していて地上並みの光を得られているでござる」


「それは凄いですね……量産すればかなり便利じゃないですか?」


「これもロストテクノロジーで量産方法は不明でござる、そもそもこれは【魔導】すら使っていないらしいから、【魔導具】を複製しても別の場所では使えない可能性が高いでござる」


「もしかして、その【魔導具】って禁忌指定されてるやつなんですか?」


「レイ殿、上の【転送陣】も含めてここの【魔眼協会】支部の施設はほとんどが禁忌指定でござるよ、だからもし【聖教会】にこの場所に入られたら支部は破棄してでも皆を脱出させなくてはいけないでござる」


「そしたら僕はあまり不用意にここへ来ない方が良いんですか?」


 もし自分がよく出入りしているのがバレたらここの支部に迷惑をかけてしまうんじゃないだろうか?


「大丈夫でござるよ」


 ペンザエモンさんの話では、この【魔眼協会】への【転送陣】はいくつかあって、【転送陣】がバレても登録されていない者が【転送陣】載っても発動しないらしい。


【聖教会】の何人かは強引に発動する事は出来るかもしれないけど、その者がくる前に【転送陣】を破壊してしまえば、支部は安全らしい。


 そのかわり【スカウトフォート】経由の【転送陣】はこれだけらしいから、二度と【転送陣】で【スカウトフォート】へはこれないと言っていた。


 そう考えると【転送陣】のある建物に来るまでの経路を更に慎重にした方が良いなと思った。


「これからは気を付けないといけないな……」


「今でも十分でござるよ、但し【マリア学園】の人たちとはあまり関わらない方が良いかもしれないでござる、あそこは【聖教会】の下部組織みたいなもので感づく者ももしかしたらいるかもしれないでござる」


「確かに教師達は危ないかもしれないな……」


 今更なところはあるけれど、極力【魔眼使い】だとバレないように生きた方が良いのかな?と思ってしまう。


「レイ殿の場合は野良の【魔眼使い】だと思わせておけば大丈夫でござる、さて到着したでござる」


 それからペンザエモンさんに紹介してもらった出店希望者は11人もいて、ほとんどが12歳から14歳までの男女だった。


 出店数は2店のみで、串焼き屋とケバブっぽい【スカウトフォート】で流行っている食べ物を販売する事が決まっているらしい。


 そんな訳で自分は屋台には立たないで、串焼きの肉を仕込んだり、ケバブもどきの具材や生地を仕込んだりする係りになった。


「あ、あの私も準備する係りになったジェーンです、よろしくね」


「僕はレイです、よろしくお願いします」


 ジェーンさんは12歳の女の子で気が弱そうな感じがどことなくシンシアっぽいなと思った、ジェーンさんは両眼を特殊な【魔導具】で隠しているので、変装する【魔導具】を使ったとしても動きに違和感が出てしまうので人前には立てないという理由で仕込み担当になったらしい。


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