第310話 聖女候補者
【マリア視点になります。】
私はアーサーの動きを調査するためにいろいろな地域を飛び回っていて、久しぶりに【レイクハート】に帰ってきていた。
しかし、明日は学園の視察などしなくてはいけないので休みになる日はほとんど無かった。
「アミルは……今頃、屋台かしら?」
私と一緒に調査へ出ていた【魔王】アミルは小さい体ながら暇さえあれば何かを食べていたりするのだけど、最近は移動中の食事が美味しくないと機嫌が悪くなるので困っていた。
街にさえ着けば食べるところは沢山あるので食事には困らないが、魔獣の拠点を叩く場合や野宿をする場合の簡易的な食事が美味しくないのだ。
私は貧しい町の出身だから、食事が出来るだけで不満は無いのだけど、アミルの場合はそうもいかないのよね。
コンコン。
アミルの食事をどうしようか迷っていたら、誰か来たみたいね。
「マリア様、ご報告したいことがあります。」
「はい、どうぞ。」
報告に来たのは【聖教会】の職員で、主に情報管理を担当している者だ。
もしかしてアーサーが発見されたのかしらと期待したのだが、違う内容だった。
「不確定情報ですが、【スカウトフォート】にて【精霊魔法】を扱う者を発見したとの報告が上がっています。」
「【精霊魔法】!? それは凄い発見ね。」
【精霊魔法】は初代【聖女】が使えたという以外は未発見のレアスキルで、【聖教会】としては特殊【魔眼】並に重要視されていた。
「それでその【精霊使い】は何をしている人なの?」
「【マリア学園】の教師からの報告で、【ハンタースクール】の女子生徒みたいです。 種族はエルフ族で【魔力】を消費しないで【アクティブ】スキルなどを使用出来るみたいです。 詳細は我々が再度調べてから報告する事になります。」
「その報告が正しければほとんど確定ね。その子をこっちに転校出来ないかしら?」
【魔力】消費無しで発動出来る【パッシブ】スキルはいくつかあるけど、【アクティブ】スキルに関してはほとんど報告がない、例外として【精霊魔法】などがある。
仮に【精霊魔法】でなくても私達の管理下に置き、将来的には全力として【聖教会】に置いておきたいと思う。
「分かりました。 その様に交渉します。」
「来てもらえるのが難しそうなら私が直接話に行くわ。 間違っても【魔王】達には言わないでよ?」
「分かっています。 【魔王】様達には報告していません。」
「よろしくね。」
【魔王】達に悪い人は居ないんだけど、ちょっと短絡的な人が多くて困るのよね。
力の加減が難しくらしくて魔獣相手位にしか仕事を回せないし、交渉に至ってはほとんど出来ない。
もし【魔王】達が【精霊使い】みたいな重要人物がいると知ったら、強引に連れてきてしまうかもしれないのだ。
その前も【帝国】内の【魔眼協会】が保護しようとしていた【魔眼使い】を【魔王】のひとりが強引に保護してしまって揉めてるのよね。
まあ、【帝国】の【魔眼協会】は非人道的な事をしている疑いがあるというか、ほぼ非人道的な事をしているから仕方ないのだけど、流石に壊滅させるには【魔王】5人は必要になりそうだし、他にも危険な組織や【邪神族】の勢力があるから難しいのよね。
【聖教会】にもっと【魔王】クラスの猛者がいれば助かるのだけど、せめて【魔王】候補だけでも見つからないかしら?
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