第307話 黒き悪魔部隊 ②

 自分とブラットはログハウスの近くで焚き火をしながら寝ていた。


 女子達はログハウスで寝てもらい、男子のふたりは外で野宿する事にした。


 最初は一緒にログハウスで寝ようって言われたけど、初めて会った女子達の中で寝れるほどのメンタルはまだ無かったから、見張りも兼ねて外で寝ることにしたのだ。


 ちなみにセシリアは外で周囲の警戒をしながらアビスハートの面倒を見てもらっている。


『アビスハートの様子はどう?』


『やはり昼間の吸血魔獣の件はアビスハートがやった事でした』


『やっぱりそうなんだ……それにしても魔犬を排除してくれるのは助かるけど、何で吸血して倒したか分かる?』


『それはアビスハートの栄養源が【魔力】の含んだ物だからではないでしょうか』


『【魔力】か……』


 確かに【虹結晶】などを作成した時に分かっていたけど、魔獣の血液中には大量の【魔力】が流れていたから、効率的に【魔力】を摂取するなら血液だけを抜き取るのが良いからだろう。


『でも、そしたら【魔石】を食べた方が効率的だよね?』


『試しに【魔石】を与えてみますか?』


『うん、よろしく』


 今まではアビスハートに果物とかを与えていたけど、今後は街の周辺に解き放って育てようと考えているから、餌の事も考えないと街の周辺で吸血騒動が発生してしまう懸念が出来てしまうな。


『アビスハートに【魔石】は無理ですね……今後は分かりませんが、【魔石】を食べるにしても大きいですし、硬い物をかじる程の力もありません』


『ああ、そういう事か……魔犬の肉も硬くて吸血しかしなかったのかもしれないね』


 スモールグレーキャットなら街中の残飯などを食べて生きていけるだろうけど、魔物化してしまったアビスハートには大量の【魔力】が必要なのか……


 ん?


【魔力】なら何でも良いのかな?


 自分は焚き火から離れてセシリアの所まで移動する。


「どうしたのですか?」


「ちょっと直接試したい事があってね、【魔力】が必要なら僕が【魔導】を注入しても同じ効果にならないかなと思ってね」


「なるほど、それが可能ならば食事を考えなくて良いので便利ですね」


 自分はアビスハートに向かって【テイム】したときの様に【魔導】を徐々に注入していった。


 ちー! ちー!


「これは正解かもね」


 アビスハート達は【魔導】を与えると次第に嬉しそうに小さく飛びながら鳴き始めた。


 あとはどれくらいの量を与えれば良いのかな?


「お腹いっぱいになったものから離れていってくれるかな?」


 ちー! ちー!


 分かったのかな?


 ゆっくりと【魔導】を注入していくけど、アビスハート達は誰も自分の周りから離れようとしなかった……


 これ大丈夫なのかな?


「限界がくる前に離れてよ?」


 ちー! ちー!


 アビスハート達に意志が通じていると信じて【魔導】を注入していくと……


「あれ? なんか眼の色が変わってきてない?」


「確かに赤い眼から黒い眼に変わりましたね……」


 結局、5分ほどアビスハート達に【魔導】を注入した位で自分の周りから離れてくれたので、意志が伝わっていたのが分かり助かった。


 それにしてもアビスハートの体格に対して【魔導】の与えた量は遥かに多い気がしたけど、大丈夫なのかな?


 元気そうだから大丈夫そうなんだけど、ちょっと不安になった。


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