第297話 ピクニック ③
自分達はキャンプ場までスピードアップして進む事になり、【アビスハート】を大量に放った後、【魔導球】も何個か発動させる。
「レイくん、その浮いている球は何ですか?」
「ああ、これは警戒用に僕達の周囲を飛ばしておくんです。これがあるとかなり楽なんですよね。」
「便利そうだな。それは【スカウトフォート】で売ってるのか?」
カノーさんが気になっているみたいだな。
「いえ、これは自分しか使えない【魔法具】なんで売ってはいないんですよ。」
「それは残念だな……、私達は偵察などが得意ではないから、いつも過度な警戒をして疲れてしまうのだ。」
「まあ、僕も偵察などはそこまで得意ではないので、道具でカバーしてる感じですね。」
エレナやセシリアならば広範囲の偵察も可能だ。
最近のセシリアは高性能になりすぎなので、自重して自分の護衛以外ではあまり活躍しない様にしてもらっている。
まあ、セシリアが本気の護衛をすればカノーさん達もいらないかもしれない……
「レイがその球を出すと発見したらすぐに狩るから、俺の出番がほとんどなくなるんだよな。」
「ならちょうど良いからニナさん達の護衛をしてれば? 冒険者には護衛の仕事が多いみたいだから、その練習にさ。」
ニナさんとブラットを仲良くさせるピクニックなのに、さっきからブラットは狩りばかりしていてニナさんと話すらしていないのだ。
「なるほど、それは面白そうだな。 ニナ達の護衛は俺がやっていいですか?」
自分達は狩りに集中している間はカノーさん達がニナさん達を護衛していたから、ブラットはカノーさんに護衛役を変わってもらえないか頼んでいた。
「ブラットくん位の実力があれば私達の代わりに大丈夫でしょう。」
「ブラットくん、お願いしますね!」
「ああ、任せろ。」
ニナさんはブラットと距離が近くなるので、凄く嬉しそうだった。
せっかくのイベントなのに、このままではニナさんが可哀想だからな。
☆
キャンプ場まで【魔導球】による探索をしていたのだが、あれから一切引っかからなくなって、静かすぎて逆に不安になってきていた。
さっきまであれほど魔獣が出てきていたのに【魔導球】を出した途端に魔獣の反応がなくなるなんて……。
「魔獣に遭遇せずにキャンプ場に着きそうですが、レイくんが何かしてくれてるんですか?」
「あっ、魔獣除けみたいな物があるとか?」
カノーさんとシチリスさんも魔獣がいないことが気になっていたみたいだ。
「え、いや、単純に魔獣がいなくなったんですよ。 僕も急に魔獣に会わなくなって不思議に思っていたんですよね。」
「それは確かに不思議ですね……。」
そう言えば、アビスハートが帰ってこないな?
しばらく歩いていると魔獣に遭遇せずにキャンプ場に到着してしまった。
キャンプ場と言っても広大な更地があるだけの何もない場所だった。
しかし、すぐ森や川があり自給自足するのには適した場所ではある。
この世界のキャンプはレジャーではなくサバイバルなのだろうか……
これならエレナが来てくれたらかなり楽だったかな?
「途中から暇だったな。しかし気のせいかもしれないが、遠くの方で魔獣の吠える音が聞こえた気もするんだよな……。」
「そんなの聞こえた?」
「いや、たぶん俺の気のせいだろう。 さてと、キャンプ場に着いたから野営の準備をするかな。」
「テントを張るんだっけ? そう言えば僕はテントを設置したことないかもしれないな。」
「確かに学校ではまだ実習してないからな。 でもレイは家を建てたりするのは得意だろ?」
「まあ、家に関してはそうだけど……。」
家とテントは全く違う技術な気がするんだが。
前世の組み立て式のお手軽テントなら組み立てたことはあるし、実際に【ストレージ】には自分で作った巨大なお手軽組み立てテントならあるのだが、ブラットの言っているテントは周辺の木や草などを利用した遭難者がやりそうなサバイバルテントなのだ。
ニナさんやシチリスさんなどが居なければ出しても良いんだけど……
そうか!
「ブラット、1時間位くれれば作っておくよ。」
「そうか? なら俺は川で魚でも取ってくるぜ。」
ブラットとシチリスさんは川へ、ニナさんやコーデリアなどは森で野菜などを取ってくる事になった。
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