第293話 白銀二刀流 ③

 自分とセシリアはペンザエモンさんと共に【スカウトフォート】の街中を【魔眼】を探しながら見回りしていたのだが、突然ペンザエモンさんが怪しい強化薬をばら撒いている者を発見したらしい。


「怪しい強化薬って【覚醒薬】の事ですか?」


「ほう、レイ殿は何か事件の事を知っているでござるか?」


 自分はペンザエモンさんにカーラ先生を襲撃したサリウスの事を簡単に説明した。


 元々は弱い研究者だったサリウスがカーラ先生とマギリさんの2人がかりで戦って苦戦するほどの強者に変貌させるような【覚醒薬】が街にばら撒かれたら大変な事になりそうだなと思った。


「我が輩達が掴んでいる情報とレイ殿のいう【覚醒薬】は同じものでござるな。一部の学生や冒険者で急速に広まっているものでござるが、あれは危ないものなので早めに止めないとダメでござる。」


 ペンザエモンさんは【覚醒薬】を広めている人に近づこうとしていた。


「【覚醒薬】が危ないのは分かるんですが、【聖教会】に任せた方が良いんじゃないですか?」


 ペンザエモンさんはカーラ先生より強いだろうとは思うけど、戦闘職ではないサリウスですらあんなに強かったのを考えると、犯罪集団に対応するプロである【聖教会】に任せた方が良いのではないかと思った。


 しかし、ペンザエモンさん逆に質問されてしまった。


「……レイ殿は街ひとつに滞在している【聖教会】の強者は何人ほど居るか知っているでござるか?」


「えっ? 【スカウトフォート】の広さから考えたら20人位ですか?」


 強者のレベルが分からないが、カーラ先生クラス以上の強さはないと犯罪者を取り締まれないだろう。


 そのクラスの人なら2人か3人でパーティーを組んで見て回るとしたら【スカウトフォート】みたいな大きな街なら20人でも少ないかもしれないな。


「【スカウトフォート】にいる強者は、フラディウという1人だけでござる。」


「えっ? 1人だけ? 【聖教会】なのに?」


「そうでござるよ。現在の【聖教会】は優秀な人材不足でござるからな……」


 流石に【スカウトフォート】で起きる犯罪を1人でカバーするのは無理があるのではないのだろうか。


「しかも常に街内に居るとは限らないでござる。昔は【聖教会】の【認証の指輪】が機能していたから1人でも何とかなっていたでござる。」


「ああ、そういう事なんですか。」


 いろいろ犯罪組織が長い歳月をかけて【認証の指輪】対策をしてきたので、昔より野放しになっている犯罪者が多いみたいだ。


「【聖教会】も【魔眼協会】も人手不足は変わらないでござるが、まだ【魔眼協会】の方が人材は多いでござる。」


「でも【魔眼協会】の人達は……」


【魔眼使い】は多いみたいだったけど、ペンザエモンさんみたいに【魔眼】が安定している人は少ない印象だった。


「不安定な【魔眼使い】の中には死ぬ前に誰かを助けたいとか、何か生きた証を残したいという理由で無理してでも街のために人知れず戦っている者が居るでござる。」


「自分は恵まれてるんだなぁ……。」


「さて、逃げられない内に薬をばら撒いているヤツらを捕縛するでござる。レイ殿は少し離れた場所から見てると良いでござる。」


「自分も一緒に戦っちゃダメですか?」


「まだレイ殿には厳しいでござるな。」


「そうですか……」


「レイ殿が【魔眼協会】に協力してくれる気があれば、鍛えた後で近い内にテストするでござる。さて、行ってくるでござる……【白銀二刀流・三十六乃剣・真速分身・無影心】」


 そう言いながらペンザエモンさんはもの凄い速度で薬をばら撒いているヤツらに接近していった。


 そしてペンザエモンさんは5人いた奴らをあっと言う間に倒してしまった。


 ペンザエモンさんが加速した途中から身体が分身したみたいな残像が見えたかと思うと、自分の眼でも認識出来ないレベルの動きになり、気が付いたら5人が倒れていたのだ。

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