第291話 白銀二刀流

 自分とセシリアは、学校が休みの日にペンザエモンさんから白銀二刀流を習っていたのだが……。


 自分は未だにペンザエモンさんから剣技を習う段階にはいなかった。


「ペンザエモンさん、いつになったら白銀二刀流を習えるんですか……?」


「それはレイ殿の【魔装】次第でござるよ。」


「ですよね……。」


 そう、自分は白銀二刀流を習うには【魔装】を使いこなす必要があるらしいので、まずは【オルタナティブアーマー】を装着した状態で【魔装】を使い基礎訓練をしていた。


 【オルタナティブアーマー】も日々進化しており、改善点を毎日の様に修正していて、今の最新バージョンでは機械音声みたいな感じではあるが【オルタナティブアーマー】を着ながら話が出来るようになっていた。


「それにしても、レイ殿よりセシリア殿の方が運動神経は良いでござるな。【魔装】や【身体強化】を使わずにこの運動能力は驚異的でござるよ。」


「セシリアはハイスペックだからね。」


「ありがとうございます。」


 セシリアは高密度な【魔鋼材】を使った骨格に、複数の【虹結晶】や【虹魔石】を埋め込まれた高出力な身体なので、素で高度な【身体強化】をしている様なものなのだ。


 そんな事を知らないペンザエモンさんには超凄い天才護衛メイドに映るのかもしれない。


「それよりも、セシリアは何で黒い鎧を着ているの?」


 セシリアは自分の着ている全身鎧タイプよりは軽装でミニスカートタイプになっている黒い鎧を着ていた。


 もちろんではあるが、顔も完全に隠している。


「それはやはりマスターに合わせて黒い鎧を着た方が馴染むと思いましたので。」


「僕とセシリアが並んで歩いていたら凄い怪しいよ。」


「秘密の騎士部隊みたいでマスターが好きだと思いましが……」


「うっ、確かに嫌いではないけど、ちょっと恥ずかしいかな。」


 黒い鎧の男女コンビはかっこいいし好きではあるが、セシリアが黒い鎧を着ていると自分が【オルタナティブアーマー】を着ていることを思い出してしまうから、常時恥ずかしくなるのだ。


 せめて【オルタナティブアーマー】の見た目が普通の黒い鎧だったら良かったんだけど、過度な禍々しい細工などがファンタジーゲームの中ボス感があるんだよな……


「それでしたら、外では戦闘時以外は使わないことにします。」


「うん、そうしてくれると助かるかな。あと自分が【魔装】の練習をしている間、セシリアに白銀二刀流を教えて欲しいんですが……」


「その事なんでござるが、セシリア殿に教えられるのは白銀二刀流の基礎部分のみで、それ以外の奥義などは使えないでござる。」


「えっ、それってセシリアに【魔眼】が無いからとか?」


「それもあるでござるが、セシリア殿が【魔装】を使えないのが理由でござるよ。」


「【魔装】が必要なのか……」


 セシリアが【魔装】を使えない理由は分からないが、基本的にセシリアの使う能力はスキルとは少し違っているし、【魔導具】などや【暗黒魔闘技】を使えるが【魔法】などは使えない。


 そんなわけで【魔装】も使えない理由が分からないが、セシリアが使えないと思ったものは使えないのだ。


「白銀二刀流は【魔装】を使うことで人体の限界可動域を超えた剣技を実現したものでござるから、セシリア殿が奥義を使ったら身体の一部が粉砕するでござるよ。」


「なるほど……、なら玉砕覚悟だったら使えるんですか?」


「……腕が変な方向に曲がるだけでも激痛になるでござる。それが同時に数カ所となったら痛みのあまり気絶してもおかしくないでござるよ。【回復魔法】なら治るかもしれないでござるが、修得するまでに何回も続けるのは狂気でござる。」


「あ~、確かにピンチの時に使う以前に修行中に精神が崩壊しそう。」


「マスター、私なら痛みなど気にしませんが……?」


「セシリアなら出来そうだけど、止めておこう。」


「わかりました。」


 セシリアには痛感が無いし、自己【治癒】で数分もすれば完全回復するし、何よりトラウマになることがない。


 しかし、有り得ない角度に腕や足が曲がりながらも平然と戦うセシリアを見たくは無かった。


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